議事録

2022年12月9日 総務委員会(地方自治法改正・議員の請負禁止の解禁)

議事録

【伊藤岳 参院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。法案提出者にお聞きいたします。

 地方議員のなり手不足対策だというのであれば、都道府県議長会の研究報告書が大きなハードルとなっていると見直しの必要性を指摘しているように、町村議会議員の供託金一律十五万円の負担こそ廃止すべきではないでしょうか。

 

【あかま二郎 衆議院総務委員長代理】

 お答えをいたします。まず、町村議会議員選挙における供託金制度でございますけれども、委員御案内のとおり、町村議会議員選挙の選挙公営の拡大、これに伴うて令和二年の公職選挙法改正により導入されたものでございますけれども、この供託金制度でございますが、真摯に当選を争う意思のない候補者の乱立であるとか売名目的の立候補の防止等を目的とする制度であるというふうに理解をしております。

 そして、この供託金制度の導入とともに選挙公営の拡大が行われたことにより、選挙費用の負担の軽減であるとか、また選挙運動の充実が図られたことによって、多様な人材が立候補しやすい環境、これが整備されたというふうに理解をしております。

 こうした制度全体の趣旨、目的等を踏まえれば、なり手不足対策のために町村議会議員選挙における供託金制度、これを廃止するということは適当でないというふうに考えております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 なり手不足対策は深刻だと言いながら、その一方で立候補のハードルを設ける、これはやっぱり本末転倒ではないかと私思います。

 こんな高い供託金を取っている国はありません。供託金制度を廃止する国も出ています。供託金そのものが時代遅れで、見直しが急務だと指摘しておきたいと思います。

 一九五六年の地方自治法改正は、地方議会と国会とは違い、重要な契約や財産の取得なども議決事項としており、その意味で、当該団体に対して直接請負する行為をやめて、議員としての活動の信頼を高め、また、執行への疑いをなくすことを改正理由として、地方議員の請負の禁止規定を明記しました。

 全国市民オンブズマン連絡会が口利き記録制度の調査を行っています。この調査の背景について、自治体に対する働きかけの過程で贈収賄が行われた経験があると記されています。地方自治体の不正や談合に対する国民の関心に応えるものだと思います。

 二〇一五年度の行政への働きかけについての記録の調査を見ると、京都市が、記録件数八千六百九十九件のうち、当該自治体議員の働きかけによるものが七百三十四件ありました。神戸市は、記録件数一万九千百四十件のうち、当該自治体議員の働きかけによるものが四百三十三件もありました。

 松本大臣にお聞きします。

 今、自治体行政における契約や財産の取得などに係る議員からの働きかけに国民の厳しい目が、厳しい監視の目が向けられており、地方議員の活動と自治体行政の信頼が問われている、その認識はありますか。

【松本剛明 総務大臣】

 伊藤委員に御答弁申し上げます。地方分権改革の進展や人口減少、少子高齢化に伴う住民ニーズの多様化、複雑化に対応するため、地方公共団体が果たす役割や直面する課題は大きくなっております。こうした中、総務省においても、団体の事務の適正性を一層確保するとともに住民からの信頼の向上に資するよう、長や議会、監査委員を含め、地方公共団体のガバナンス強化の取組を進めてきたところでございます。

 議会につきましては、条例、予算に加え、一定の契約や財産の取得等に関して議決を行うなど、地方公共団体の意思を決定する上で重要な役割を担っております。

 御指摘のように、一部の議員の不適切な行為が見られることも報道などで承知しておりますが、議会や議員がその役割を果たす上で住民の信頼を損なうことがないよう、各議会や議員においてその重要な役割や責任を自覚し、しっかりと取り組まれることが重要であると考えております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 法案は議員の請負の規制を緩和しますが、私の地元埼玉県内の町村における事例を紹介したいんです。お聞きいただきたいと思います。

 具体的な町名は伏せますが、A町では、町議会議員の妻が社長を務める土建業者が道路拡幅、排水施設工事、公民館解体工事などの公共事業を指名競争入札で落札をしています。昨年、令和三年度は、道路関係工事で三件、四千八百四万六千九百円の請負工事を受注をしています。本人が町の仕事を取るために議員になったと言っていたと、町民の複数の証言もあります。ほかにも、息子が社長を務める水道事業者が請負工事を受注しています。

 また、B町では、町議会議員の妻が社長を、まあ現在は息子が社長だそうですが、務める土木事業者が町道拡幅の公共工事を請け負っています。このB町では、以前は町の政治倫理条例で議員本人との親等数で請負を規制してきましたが、条例が改定され縛りが緩められて以降、議員親族の請負が出てきたとのことです。町民から議会と行政に対する疑問と批判の声が出ているのは当然のことだと思います。

 法案提出者にお聞きします。

 地方議員の請負の禁止規定を緩和したら、妻や子に経営者を変更して請負を受注してきた議員が、大手を振るって議員個人が請負を受注できるようになります。請負事業者たる議員による地位利用や談合が横行することになるのではないか、地方自治体が定めている政治倫理条例も崩されていくことにつながるとは思いませんか。

 

【奥野総一郎 衆議院総務委員長代理】

 先生の御懸念もごもっともだと思いますが、議員個人の請負緩和は喫緊の課題である議員のなり手不足に対応するものでありまして、これによって、委員御指摘のような請負事業者たる議員による地位利用や談合が横行することはあってはならないのはもちろんのことであります。

 そのためにも、緩和する個人の請負の上限額は十分に低廉な水準とすべきであることから、政令においてひとまず三百万円と規定するのが適当でありまして、何千万ということにはなりません。

 また、先日の衆議院総務委員会の決議では、議員の職務執行の公正や適正を損なわないよう、議員個人による請負状況の透明性を確保するための対応について各地方公共団体に適切な助言を行うよう政府に求めることとしております。これによって、各自治体において、必要に応じて議員個人の請負の状況について公表等の措置がとられるものと私は理解しております。

 さらに、問題が疑われる事案が生じた場合には、地方自治法第百二十七条に基づき議会が違反の有無を決定し、違反する旨が決定された場合には議員が失職することとされております。

 このようなことから、議員個人の請負緩和によって、請負事業者たる議員による地位利用や談合が横行することにはならないものと考えております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 地方自治体が制定する政治倫理条例は請負の規制の役割を持っています。

 大臣にお聞きしたい。地方自治体の政治倫理条例の制定の現状を示してください。また、倫理条例制定を推奨するために総務省として技術的助言や参考例の紹介等を行ってきましたか。

【松本剛明 総務大臣】

 御答弁申し上げます。総務省としては、各地方公共団体が自主的に定めているいわゆる政治倫理条例の制定状況について、総務省としては把握しておりませんが、全国市議会議長会及び全国町村議会議長会の調査によりますと、令和三年現在、市及び特別区で四九・三%、町村で条例以外によるものも含め三四・四%が制定していると承知をいたしております。

 いわゆる政治倫理条例の制定についての技術的助言などは総務省としては行っておらないところでございます。

 

【伊藤岳 参院議員】

 最後に、法案提出者にお聞きします。

 請負事業者が議員になることで、本来、行政による契約や取引行為を監視し、チェックする議会の役割が、これ果たせるんでしょうか。やはり、地方議員の請負の禁止規定の緩和はやめるべきではないでしょうか。どうですか。

 

【奥野総一郎 衆議院総務委員長代理】

 御懸念もごもっともですが、先ほど申し上げましたように、三百万円という低廉な価格に抑えていること、そしてこの約束事を破れば失職という厳しい措置も待っております。また、各自治体において十分透明性の確保に努めるということをもちまして、そうした御懸念は払拭できるというふうに思っております。

 以上です。

【伊藤岳 参院議員】 まとめます。

 小規模請負の物品、役務の八割が年間受注額三百万円以下となっています。本法案で、議員個人の請負のほとんどが可能となります。住民の信頼を得られるようにすることが政治の役割だと訴えて、質問を終わります。ありがとうございました。

 

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】 討論に先立ち、一言申し上げます。

 参議院として衆法の審議を尽くすためには十分な時間が必要です。会期末に紛れ、定例日審議の原則も踏み破った委員会の開催、こうした乱暴なやり方に強く抗議をするものです。

 私は、日本共産党を代表して、地方自治法改正案に対する反対討論を行います。

 地方議会議員の請負を一律に禁止する現行法の規定は、地方議会が行政による契約や財産取得などの議決権を持つ下で、議員の地位利用などによって行政の執行に疑いを生じさせる事態を避け、議員活動への住民の信頼を確保するための極めて重要な規定です。今日、自治体行政の行う事業の受注や物品納入などをめぐる汚職や口利きなどの不正行為は後を絶たず、地方議員が関与した事件も少なくありません。国民の厳しい目が向けられているにもかかわらず、規制緩和などと称してこれまで禁止してきた地方議員の請負を事実上解禁することは到底許されません。

 本法案は、議員の請負禁止の範囲について省令で基準を設け、年間三百万以下であれば容認するというものです。小規模請負の物品、役務の八割が年間発注三百万円以下であり、この基準によってほとんどの小規模事業者が請負禁止から除外され、地方議員になれることになります。議員の請負を事実上解禁し、請負事業者が地方議員になれば、本来、行政の契約行為等を監視し、チェックする役割を持つ議会の場において、請負事業者たる議員による地位利用や談合が横行する事態さえ懸念されます。

 法案は、議員活動への信頼と行政執行の公正を担保する規定を空洞化するものであり、断じて認められません。

 提案者は、地方議員のなり手不足対策を強調しますが、それを言うのならば、二年前の二〇二〇年に導入された町村議の供託金一律十五万円の負担こそ直ちにやめるべきです。女性や若者にとって、立候補の際に要求される供託金の負担が大きなハードルになっていることは明らかです。また、全国町村議会議長会が毎年要望している被選挙権の引下げ、戸別訪問の解禁など、やるべきことをやらずに、なり手不足を口実に不正、腐敗を防止するための規定を改悪することに反対を表明し、討論といたします。