議事録
【伊藤岳 参院議員】
日本共産党の伊藤岳です。電気通信事業者の情報漏えいなどが国民に不安をもたらしており、インターネット上の利用者情報保護は法改正の焦点だと思います。
LINEで使用するスタンプや絵文字を作成をしてLINEクリエーターズマーケットで販売している方から私の事務所に相談がありました。スタンプや絵文字の年間売上額が五万円を超えると、LINE社にマイナンバーを提出しない限り売上金を受け取ることができないという相談でした。
国税庁にお聞きします。LINEなど報酬を支払う者は、税務署への個人情報、マイナンバー提出義務があるのは承知はしています。では、報酬を支払う者は、報酬などの支払に当たって、報酬を受け取る対象者の個人情報、マイナンバーの提出を求める義務があるのですか。
【星屋和彦 国税庁課税部長】
お答え申し上げます。一般論として申し上げますと、所得税法上、企業が一定の報酬を支払った場合につきましては、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書に支払を受ける者のマイナンバーを含め必要な事項を記載して税務署長に提出しなければならないこととされてございます。
また、支払調書を提出する企業は、報酬の支払を受ける者からマイナンバーの提供を受ける必要があるため、番号法によりまして、報酬の支払を受ける者に対してマイナンバーの提供を求めることができることとされてございます。
このように、支払調書へのマイナンバーの記載は税法上定められた義務でございますので、支払調書を提出する企業に対して支払を受ける方がマイナンバーを提供することについて御理解いただきたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】
番号法上はマイナンバーの提出を求めることができる、つまりマイナンバーの提出を法律上強制することはできないということだと思います。確認をしたいと思います。
マイナンバーの提出は、国民に求めることはできますが、国民に提出を強制することはできませんよね。確認します。
【星屋和彦 国税庁課税部長】
法令上、義務が規定されておりますのは支払を受ける企業でございますので、企業の方で支払先からマイナンバーを確認をして調書に記載をして提出をするということでございます。
【伊藤岳 参院議員】
国民に提出を強制することはできないということです。確認をいたします。
マイナンバーの提出義務があるのは契約者なのか契約先なのか、個人データを取り扱っている電気通信事業者であるLINE社が理解をしていないという状況に私大変な危機感を覚えます。
そもそも、相談者の方がマイナンバーという極めて機微なプライバシー、個人情報を提出したくなかったのはなぜか。LINE社が個人情報の漏えいの問題、LINE社におきまして個人情報の漏えいの問題があったからです。冒頭紹介したように、個人情報漏えいの不安が現にあるからであります。法制度の検討を行った電気通信事業ガバナンス検討会などの議論の出発点の一つもLINE社の不適切な利用者情報の取扱いだったと思います。
そこで、法案についてお聞きをしていきます。
まず、安心、安全で信頼できる通信サービス、ネットワークの確保についてです。
個人のプライバシー権の保護を前提に個人情報の取扱いについて規制が進んでいるEUにおいては、個人データの定義が識別された又は識別され得る自然人に関する全ての情報として規制をされていますが、日本ではインターネット上の危険性の認識と利用者情報保護は遅れていると思います。
総務省は、利用者の個人情報が中国の委託企業で閲覧可能となっていたLINE社の案件に関わって、諸外国の法的環境の変化などにより、利用者が安心して利用できる電気通信サービスの提供の確保が急務との課題を挙げられました。この諸外国の法的環境の変化とはどのようなことを指していますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。近年、諸外国において政府機関などの公的機関による民間部門が保有する情報への強制力を持ったアクセス、いわゆるガバメントアクセスなどを可能とする法制度が整備されてきておりまして、利用者に関する情報の漏えい、不適正な取扱いのリスクが高まりつつございます。
諸外国の法的環境の変化に関しては、そうした諸外国における法制度の環境変化について言及したものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
委員長、言い忘れましたが、国税庁に関する質問は以上ですので、国税庁の方は御退席をいただいて結構かと思います。
だから、つまり、国から求められれば個人情報が情報提供されてしまう可能性のある国が現に存在し始めているということですね。
利用者が安心して利用できるように、利用者情報の情報保管先、サーバーの設置国名の公表について、これ義務付けられるのでしょうか。どのように定められるのでしょうか。ほかの方の質問にもありましたけど、改めて、義務付けられるのか、どのように定められるのか、整理してお話しいただけますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。本法案においては、基本的な枠組みは法律上明確に規定をし、その枠組みの中で、制度の趣旨に沿って、電気通信分野の環境変化に柔軟に対応し、適時適切に見直し、弾力的に運用することが必要な事項や細目的事項については下位法令で規定することとしております。
このため、本法案においては、利用者に与える影響が大きい電気通信事業者に対し、情報取扱方針を自ら定め公表する義務を規定するとともに、その記載事項として、取得する情報の内容、利用の目的及び方法、安全管理の方法、相談窓口を規定しておりますが、それ以上の具体的な内容は省令で定めることとしております。
委員御指摘のサーバーの設置国名につきましては、基本的な枠組みというよりも安全管理の方法の細目であることに鑑みまして、省令事項とすることとしたものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
サーバーの設置国名の公表は今後省令で定める、つまり法律事項とはされなかったということだと思います。では、なぜ法律事項として定めなかったんでしょうか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。先ほども御答弁申し上げましたけれども、細目的事項については下位法令で規定するということで、基本的な枠組みを法律上明確に規定をした上で規定をしていくということでございますので、サーバーの設置国名につきましては安全管理の方法の細目ということでございますので、省令事項とさせていただいております。
【伊藤岳 参院議員】
では、お聞きします。本法案成立後、省令はどのような過程を経て定められるのか、示してください。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。本法案をお認めいただきました後に、有識者会合、ガバナンス検討会の下にワーキンググループを設けまして、そちらにおいて、産業界の方々も入っていただき、消費者団体の方々の御意見も聞きながらルールを定めてまいりたいというふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】
ワーキンググループを立ち上げて検討される。今局長のお話の中にもありましたけれども、このワーキンググループには、どのような団体、どのようなメンバーで構成されることになっていますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えします。消費者団体、経済団体、学識者、学識経験者の方々と総務省において有識者会合を設けて検討を進めたいと思っております。
【伊藤岳 参院議員】
構成メンバーの中に事業者団体や経済団体も入ってくるということだと思います。恐らく、その事業者側からは強い要求が出されることは予想されます。ですから、本法案成立後、省令で定めると言われますが、その省令を定めるのはワーキンググループで検討していくわけですから、事業者側の強い要求が出される。ですから、どういう省令になるのかと、これ全く見通せないというのが今の時点だと思います。
ですから、本当にこの安心、安全が確保されるのかというのは見通せない状況だと、法案成立時点では。利用者の情報保護に対する国民の不安に応えるものとはなっていないのではないかと危惧をいたします。
利用者情報の情報保管先、サーバーの設置国名の公表について、国際的な事例はどうなっていますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。情報を保管する国につきましては、国際標準であるISOにおいて、サービス提供者が利用者に対してデータを保存する可能性のある国を通知することが望ましいとされている事例があると承知をしております。
【伊藤岳 参院議員】
この通知することが望ましいという国際的な水準に照らしても、本法案はまだまだ不十分さが残されていると思います。
法案では、通信サービス、ネットワーク利用者の利益に与える影響が大きい電気通信事業者が取得する電気通信役務情報について、あっ、ごめんなさい、特定利用者、特定利用者情報について適正な取扱いを義務付けるとしています。
総務省にお聞きします。特定利用者情報の適正な取扱いについて、利用者の利益に与える影響が大きい電気通信事業者と限定をして、全ての電気通信事業者を対象としなかった、これはなぜですか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。特定利用者情報の適正な取扱いにつきましては、利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信事業者が規律の対象となっております。これは、電気通信事業ガバナンス検討会の報告書におきまして、情報漏えい時に与える影響に鑑み、特に利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信事業者を規律の対象とすることが適切であり、利用者の利益に及ぼす影響が一定程度以下と推察される電気通信事業者は自由なビジネスを阻害しないための配慮も必要であることから、利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信事業者に限定して規律の対象者にすることが適切であるとされていることを踏まえたものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
金子大臣にお聞きしたい。利用者の利益に与える影響の大小で判断されたという今局長の答弁でしたけれども、しかし、電気事業者が取得する特定利用者情報の適正な取扱いというのは、もうこれ事業規模の大小にかかわらず電気通信事業者に当然課せられるべきだと思うんですが、大臣の見解はどうですか。
【金子恭之 総務大臣】
伊藤委員にお答え申し上げます。今局長からもるるお話を申し上げましたが、通信サービスの契約者などに関する情報、すなわち特定利用者情報の適正な取扱いについては、利用者保護の観点からはより多くの電気通信事業者を規制の対象とすることが望ましいと認識をしております。他方、規制が及ぼす負担の増加についても考慮する必要があり、今回の法案では、利用者の利益に及ぼす影響の大きい電気通信事業者に限定をして規制の対象としたものでございます。
その上で、今回の規制の対象から外れる電気通信事業者に対しては、様々な関係者と議論を重ねながら、特定利用者情報の適正な取扱いに関するガイドラインを策定することについても今後検討してまいる予定であります。
本法案や、それに関連する様々な取組を総合的に進めることにより、利用者の皆様が安全、安心に通信サービスを利用できる環境が確保されるものと考えております。
【伊藤岳 参院議員】
利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信事業者の対象とされたのは、利用者一千万人以上の電気通信事業者、そしてフェイスブックやLINEなど大手のSNS事業者、グーグルなど検索大手などで、二十社から三十社が想定されると聞きました。
総務省、巨大インターネットショッピングモール、例えばアマゾン、楽天市場、アプリ利用者が五千万人以上いるユニクロなども対象事業者からは外れるんですか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。現状におきまして、先ほど委員御指摘の、規模につきましては利用者一千万人ということで御指摘ありましたが、その点につきましてはあくまで例示でございまして、今後、検討会の検討も踏まえながら、その水準並びにその適用のルールを決めていきたいというふうに考えております。
したがいまして、今お尋ねの個別の事業者につきましては、この段階では明確に申し上げることは困難かと思います。
【伊藤岳 参院議員】
いや、個別の事業者の名前挙げましたけれども、この利用者が一千万人以上の規模ってさっき言われたけれども、例えばユニクロなどは五千万人以上の利用者いるわけでしょう。こういう巨大ショッピングモールというのは対象から外れているんですかと聞いているんです。個別の事業者のことというよりも、巨大ショッピングモール。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。オンラインショッピングモール自体に関しましては、電話やメールなど、従来の通信サービスと性質が似ていないサービスでありますので、ガバナンス検討会の報告書におきまして、引き続き規制の対象外とすることが適当とされたものでございます。
なお、利用者と出店者間でやり取りを行うオンラインショッピングモールの中のメッセージサービスにつきましては、既に届出を要する通信サービスとして規制の対象となっており、実際、多くのオンラインショッピングモール事業者からも電気通信事業法に基づく届出をいただいているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】
だから、何か分かりづらいんですよ。明確にその対象事業者だとなぜ指定しないんですか。今局長が言われたとおりだと思うんだけれども、何で巨大ショッピングモールも、だから対象になりますよって明確に例示しないんですか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
繰り返しになりますけれども、その個別の適用につきましては、今後、ルールをしっかりと定めさせていただいた上で判断をさせていただきたいと思っております。
【伊藤岳 参院議員】
法案の成立時点でこういうのがすっきりしないというのは、本当、危惧の念を抱きます。
先ほどの局長の答弁だと、巨大ショッピングモールであっても電気通信事業者として届出をしているんだから規制の対象になるというふうに言われたと思ったら、いや、これから検討ですって言うんで、何かどっちがどっちか分からないんですよ。
もう一度言いますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。先ほど申し上げたオンラインショッピングモール、現行法において届出になっているという点につきましては、メッセージングサービス、いわゆる通信の媒介のサービスを行っておりますので、その部分について届出をいただいているというものでございます。
他方、今回のその規制、規律、追加的な規律につきましては、その具体的な適用については、先ほど申し上げた検討会を踏まえながら、しっかりと検討してまいりたいと思っております。
【伊藤岳 参院議員】
電気通信事業者としても届け出ている巨大ショッピングモールは規制の対象となるということだと私は理解いたしました。
電気通信事業ガバナンス検討会、これ第十六回の検討会ですが、その検討会において中央大学の石井教授の意見が紹介されています。その意見の概要、紹介していただけますか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。本検討会の第十六回会合における石井夏生利構成員からの発言は、次のとおりでございます。
また、電気通信役務の利用者情報に係る第三号事業者の新たな規律については、一定程度の人数、一千万人というくくりで整理されるということですが、小規模事業者でも、安全管理措置や業務規程を設けることや取扱方針を策定して公表するという規定は当然守ってしかるべき規律とも言えますので、小規模であることを理由に適用対象外にする根拠も必ずしも説得的なものではないと思います。
以上でございます。
【伊藤岳 参院議員】
小規模事業者でも公表は当然守ってしかるべき規律だという意見が表明されていた。
また、消費者団体からも、日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の古谷さんが、利用者の安全の確保であるとか信頼の確保であるとかというところにつながるといったところが大事、事業者の強い反対といった声を結構反映している法案だ、消費者団体の声が余り反映できていないと意見表明されています。
一方、この検討会において経済団体からは、国内IT企業でつくる新経済連盟からはこんな意見出ています。国際的に異例なガラパゴス規制だ、過剰規制による産業発展阻害の重大な懸念という意見などが表明されています。
総務省、この異例なガラパゴス規制とか過剰規制による産業発展阻害とは、これはどういうことを言っているんでしょうか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。委員御指摘の御意見は、電気通信事業ガバナンス検討会において新経済連盟からいただいております。
一点目の異例なガラパゴス規制につきましては、SNSや検索サービスを法の対象とすることなどが国際的に例がないとの御意見だったと認識をしております。しかしながら、例えばドイツの電気通信及びテレメディアにおけるデータ保護及びプライバシーに関する法律がございますが、こちらでは、検索サービス、SNS等の事業者を幅広く対象として通信の秘密及び個人情報などの取扱いを規律しているなど、検索サービスやSNSを規律対象としている国も少なくないと承知をしており、一部誤解があったものと考えております。
二点目の過剰規制による産業発展阻害につきましては、個人を識別できない情報の取扱いを規制することなどが産業の発展を阻害するとの御意見だったと認識をしております。この点については、産業界の御意見も踏まえ、電気通信事業ガバナンス検討会において、規律の対象となる情報の一部見直しが行われたと承知をしております。
【伊藤岳 参院議員】
大臣にお聞きします。大臣、今お聞きのとおり、電気通信事業ガバナンス検討会、識者の方の、小規模事業者でも当然規制すべきだという意見があった。消費者団体からも事業者の強い声を反映しているという声があった。一方、経済団体から今紹介のあったような声があった。結局、省令も、先ほど法成立後の検討会で決めていくと言ったけど、結局こういう経済団体からの強い意見に流されていっているという状況が私あると思うんです。
大臣は、この電気通信事業ガバナンス検討会で出された経済団体、民間事業者の意見は、これ私、利用者情報保護とは反する意見だと思いますが、大臣はどういう見解ですか。
【金子恭之 総務大臣】
伊藤委員御指摘の御意見に対する見解は、先ほど局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、検討の過程で出された様々な御意見の一つであると受け止めております。
本法案は、本年二月の電気通信事業ガバナンス検討会の報告書等を踏まえたものでありますが、本報告書が取りまとめられる過程においては、御指摘の新経済連盟のような経済団体のみならず、事業者団体、消費者団体など様々な関係者の御意見を丁寧にお伺いしながら検討が進められたものと承知をしております。その結果、検討の過程で様々な御意見はいただいたものの、電気通信事業ガバナンス検討会や先日の衆議院総務委員会の参考人質疑において、有識者の皆様から、新たなルール形成に向けた第一歩を踏み出していただいた、利用者保護に向けた一歩前進であるなど、本法案を評価する旨の御意見を多くいただいたと認識をしております。
総務省といたしましては、いただいた御意見を十分踏まえつつ、利用者が安心して利用できる通信サービスの確保に向けて、本法案を実効性のある制度としていくため、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】
大臣、いろいろ見解述べていただいたけど、結局消費者団体等の意見は反映されずに、大手IT企業や経済団体の意見が優先されるということになっていると思います。企業の思惑だけでなく、利用者の利益こそが守られるべきだと私、強く指摘したいと思います。
利用者の端末の位置情報や閲覧履歴、アプリケーションの利用履歴、端末識別情報などの利用情報など、いわゆるクッキーや広告IDなどにひも付く情報は、自動的に外部への通信が行われ、広告提示に利用されています。
総務省に聞きます。電気通信事業ガバナンス検討会では、利用者情報の外部企業への提供に、事前同意取得措置の義務付けか事後的な拒否、つまりオプトアウトの措置の義務付けかの二択の検討を行っていました。しかし、それに外部提供の事実の利用者への通知、公表を加えた三択という結論になりました。この三択目は誰の意見で入ったんですか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。情報の外部送信に関する規律につきましては、委員御指摘のとおり、利用者に確認の機会を付与する方法として、通知又は公表、同意の取得、オプトアウトのいずれの方法でもよいこととしております。
本規律は、電気通信事業ガバナンス検討会において関係者の御意見を丁寧に伺った上で取りまとめられた報告書を踏まえたものとなりますが、同検討会における議論において、構成員から同意疲れに関する御指摘や、経済団体から同意の形骸化に関する御意見がございました。こうした経緯もあり、実態に即した適切な方法で利用者に確認の機会を付与することを可能とすることが規律の実効性を確保する上で重要であるとの考えの下、通知又は公表を含める形で規律をしたものとなってございます。
【伊藤岳 参院議員】
ちょっと聞いていることに答えてくれていないんですが、三択目は誰の意見で入ることになったんですかと。どの団体のとか、どういう方の。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。先ほど申し上げましたとおり、検討会の中で、構成員から同意疲れに関する御指摘、経済団体から同意の形骸化に関する御意見がございました。これらを踏まえて検討会の中で御議論をいただき、通知又は公表も含めた選択肢を、通知、公表も含めていずれの方法でもよいこととしたものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
明確に答えていただけないんですけれども、これもつまりIT大手企業だとか経済団体の意見によって三択目が加えられていったということだと、私は局長の話を聞いてそう想像します。
大臣に聞きます。結局、三択になってしまったら、この今多くの事業者が既に行っている対応でもいいということになっちゃうんですね。三択目、つまり外部提供の事実の利用者への通知、公表というのはもう既に多くの事業者やっていますから。この三択という結論で利用者情報保護が前進すると、大臣、思っているんですか。
【金子恭之 総務大臣】
お答え申し上げます。本法案では、利用者情報が第三者に送信される場合、それを利用者の皆様に確認いただく機会をしっかり確保するよう、事業者に対して必要な措置を新たに義務付けることとしております。この措置については、特定の方法に限定することなく、状況に応じた柔軟な対応を可能とすることが重要と考えているほか、米国のように通知により利用者保護を図る例もございます。
こうした観点も踏まえ、本法案では、利用者が確認する方法として、通知又は公表、同意の取得、情報の第三者への提供を利用者の求めに応じて停止できる、いわゆるオプトアウトのいずれも可能としております。これらの方法のいずれにおいても利用者による実質的な確認の機会を確保し、利用者保護の観点から実効性のあるものとなるよう、本法案をお認めいただいた場合には、関係業界における取組などを踏まえ、しっかり検討してまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】
柔軟に選択できると言うけど、結局、企業は安易な選択するんじゃないですかね。結局、この法案は、インターネット閲覧履歴などに関連した利用者情報保護をうたいながらも、経済界や大手事業者の要望ばかりが優先されて、結局、肝腎の利用者情報保護が骨抜きにされたものと私は言わざるを得ないと思います。
次に、情報通信インフラの提供の確保についてお聞きします。
法案は、有線ブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務、いわゆるユニバーサルサービスの新たな類型に追加をします。
総務省にお聞きします。
有線ブロードバンドサービスの基礎的電気通信役務、ユニバーサルサービスには、全国あまねく適切、公正かつ安定的なサービスの確保が義務付けられるんですか。先ほど、ほかの委員の質問では義務付けられないということですか、ということでいいんですか。また、もう一つは、じゃ、義務付けないんだとすれば、なぜ義務付けないんですか。
【二宮清治 総務省総合通信基盤局長】
お答えいたします。現在、固定電話についてNTT東西が全国あまねくサービスを提供する義務を負っておりますのは、固定電話が電気通信事業法上の基礎的電気通信役務に指定されていることによるものではなく、NTT法第三条の責務規定に基づくものでございます。
固定電話と異なり、有線ブロードバンドのインフラは、地域に応じて、NTT東西のほか電力系事業者や地場のCATV事業者などの様々な事業者によって保有されているため、有線ブロードバンドサービスについてNTT東西に全国あまねくサービスを提供する義務を課すことは、現実的な政策の選択肢ではないと考えております。また、NTT東西以外の事業者も含め様々な事業者に対し一律に不採算地域を含めたサービス提供を義務付けることは、憲法が保障する営業の自由との関係で困難であると考えております。
このため、今回の改正案では、いずれの事業者に対しても全国あまねく有線ブロードバンドサービスを提供する義務を課すことは行っておりません。
【伊藤岳 参院議員】
そうすると、約五万世帯の方々がサービスを享受できないということになります。
総務省が主管するブロードバンド基盤の在り方に関する研究会において、日本電信電話株式会社はこう意見を言っています。NTT東西は、政府のデジタル田園都市国家構想に貢献すべく、他の事業者も含め、サービスを提供していないエリアでは、新たな交付金等による必要十分で過大でない支援を受け、活用することで、自治体と連携したブロードバンド基盤の整備、維持の担い手として積極的に取り組んでいくと述べています。
大臣、有線ブロードバンドサービスを基礎的電気通信役務、ユニバーサルサービスに追加して交付金の対象とするのは、結局、政府の方針であるデジタル田園都市国家構想の実現のためということですかね。
【金子恭之 総務大臣】
今回の法案は、社会全体のデジタル化が進む中、光ファイバーなどのブロードバンドサービスが国民の日常生活や社会経済活動に必要不可欠なものとなっていることを踏まえ、人口減少などの課題を抱える条件不利地域などの不採算地域においてもサービスの安定的、継続的な提供を確保するために交付金制度を導入するものでございます。
なお、この交付金制度の導入については、総務省が約一年十か月にわたって開催したブロードバンド基盤の在り方に関する研究会における継続的な検討の結果を踏まえたものでございます。
本法案によって、岸田内閣の最重要課題であるデジタル田園都市国家構想の実現に向けて必要不可欠な光ファイバーなどのデジタル基盤の整備が一層加速することを期待しております。
【伊藤岳 参院議員】
ですから、ユニバーサルサービスとは言うけれども、政府の戦略、デジタル田園都市国家構想を実現するために電気通信事業者の要望に応えたという法案になっていると私は思います。
交付金制度についてお聞きします。先ほど来いろんな委員の方が質問されましたのでダブるところは外しますが、結局、この事業者に負担させるといっても、事業者が価格転嫁することを想定しているということだったと思います。月八円という話も出ました。先ほど紹介したように、ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会では、NTTは交付金等の支援を要望していましたね。
で、大臣に最後聞きます。交付金制度の負担金は利用者、国民の負担で賄って、民間事業者には交付金で支援する、これ民間事業者の要望を受けた制度設計に結局はなっているんじゃないですか、どうですか。民間事業者の要望を受けた制度設計になっているんじゃないですか。
【金子恭之 総務大臣】
今後、法案が成立させていただいた中で、関係の皆さん方の意見を丁寧に聞きながら対応していきたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】
時間ですので、以上で終わります。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】
私は、日本共産党を代表して、電気通信事業法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対の第一の理由は、有線ブロードバンドを基礎的電気通信役務、いわゆるユニバーサルサービスに位置付けますが、加入電話等で位置付けられている、あまねく日本全国における提供が確保されるべき役務としての義務付け、保障がないことです。
事業者の経営判断では撤退もあり得ます。にもかかわらず、国民負担を前提とする交付金としていることは、有線ブロードバンドを維持発展していく制度としては欠陥と言わなければなりません。また、国が進めてきた競争政策では離島や山間部など条件不利地域には整備を行き届かせることができず、自治体には負担を強いるものであったことへの総括もありません。
岸田政権の目玉政策であるデジタル田園都市国家構想の実現のために有線ブロードバンドの整備、維持の提供を担う民間事業者にその費用補填を行うものであり、これをユニバーサルサービスと呼ぶことはできません。
第二の理由は、利用者情報の取扱いの制度整備では、事業者の都合が優先され、安心、安全な利用環境の確保をないがしろにしたことです。
利用者情報の取扱いの規制は、利用者が直接サービス提供のための契約若しくは登録を行った、利用者の利益に及ぼす影響が大きい事業者に限定されて、範囲は狭められました。利用者一千万人以上の電気通信事業者を想定しており、メタやLINEといったSNS大手、グーグルなど検索大手の二十から三十社に限定されることになり、問題です。
また、クッキーや広告IDなどにひも付く利用者に関する情報の外部送信は、当初、事前同意又は事後的拒否の仕組み、いわゆるオプトアウトの二択が検討されていました。しかし、経済団体、事業者の反発を受け、三択目に外部提供の事実の利用者への通知、公表の義務付けが加えられ、後退したものとなっています。
さらに、LINEの個人情報の漏えいで問題となった利用者情報の情報保管先の設置国名公表の義務付けが総務省令に委ねられていることも重大です。
以上を述べて、討論といたします。