議事録
【伊藤岳 参院議員】
日本共産党の伊藤岳です。参議院予算委員会で明らかにされた郵便局長の後継者育成マニュアルについて伺います。
金子大臣、三日の記者会見で、日本郵便においてマニュアルの内容を精査中と聞いており、総務省はその結果と局長採用との関連などの事実関係について日本郵便から報告を受けることとなっていると述べられました。
建設工事受注動態統計不正の際は、総理から一か月以内の調査などが指示されましたが、大臣、日本郵便には一か月以内などの期日を明確にした調査を求めたんでしょうか。
【金子恭之 総務大臣】
伊藤委員にお答え申し上げます。六月三日の記者会見について御指摘をいただきました。
現在、日本郵便におきまして御指摘のマニュアルの内容の精査などを行っているところと聞いております。現時点では期日は決まっておりませんが、総務省としては、可能な限り速やかに報告をいただきたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】
参議院選挙が終わるまでやり過ごすというようなことがあってはならないと思います。是非期日を明確にした調査を求めるべきだと思います。
日本郵便衣川社長、マニュアルの内容を精査とは、何をどのように調査するのでしょうか。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
法務の専門家の助言も得ながら、当社の複数の社員により、現在、記載内容を精査しているところでございます。
具体的には、当社では採用選考を厳正に実施しているところでございますが、当該マニュアルの内容において当社の局長採用における公正な選考に影響を与えるような記載がないか、精査しております。
【伊藤岳 参院議員】
最も調査すべきは、特定郵便局長の採用の問題だと思うんですね。
昨年、二〇二一年六月の福岡地裁での公判において、日本郵便九州支社総務・人事部の課長さんが、局長会支社に対し内々に候補者について情報提供してくれる、局長会と無関係の人が応募してくることもあるが、不合格になることが多く、採用されたケースは知らないなどと供述をしています。この供述調書は裁判で証拠採用もされています。
衣川社長、全特の研修を受けず、また全特からの情報提供や推薦がなく採用された特定郵便局長、エリアマネジメント局長はいるんですか。いるのであれば、何人ですか。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
伊藤委員御指摘の供述調書でございますが、当該供述調書には、全ての候補者を合格させるわけではなく、候補者の資質の有無などを検討して採否を決めていますとも記載されておりまして、会社としては厳正に選考しているというふうに考えてございます。
それから、お尋ねのありました全国郵便局長会で実施しました研修の参加の有無について、日本郵便の採用選考において確認することはございませんので、研修を経ずに採用された郵便局長数について会社としては把握しておりません。
【伊藤岳 参院議員】
是非、今回の精査、調査の中でしっかり調査していただいて、資料を提出していただきたいと思います。
資料を御覧いただきたいと思います。これ、マニュアルの実物のコピーでありますが、そのほか、その中身についても何枚か資料を配付しようと思ったんですが、残念ながら自民党理事の賛成が得られずに配付できません。遺憾であります。
このマニュアルには何が書かれているか。研修における指導内容、狙いを、全国郵便局長会、全特の目的、組織、活動及び特定局制度の三本柱等を理解させるとしています。三本柱とは、局長の選考採用、不転勤、転勤がないですね、あと自営の局舎で、これは全特が守り抜くべき権利として指導することとされています。
郵便局長の発掘、育成スキームとしては、部会長及び地区会長は、提出された後継者候補者をそれぞれ人物調査及び面接を実施し、部会推薦、地区会推薦を総合判断する、配偶者がいる場合は配偶者も同席させて面接を実施し、本人及び配偶者が共に制度への理解と協力をする意思があること、地区会推薦を得た後継候補者は次の育成、後継者育成プロセスへ移行するなどと書かれております。
こうしたマニュアルと全く符合する報道記事があるんですね。資料をお配りしました。西日本新聞、五月二十六日付けの記事です。全特の研修を受けた西日本地方の郵便局で働く日本郵便社員の証言が掲載されています。この記事の二段目の十行ぐらいからこう書かれています。
まず妻も同席して面接に臨んだ。地区会長の局長は、奥さんにも選挙に協力してもらわないといけないと説明し、夫婦で自民党に入党するよう求めた。研修は、十人前後の局長に囲まれ、そんな考えでは仲間に迎えられない、郵政事業の理念が分かってないとどなられた。屈辱で涙があふれた。選挙活動は郵便、貯金、保険に続く第四の事業、局長にとって一番大事だ。局長による局舎所有や世襲による局長採用など、日本郵便が表向きには認めていない既得権益を、今後も守らなければいけないと公言していたなどと書かれています。そして、この日本郵便の社員は局長になることを断念したそうです。
衣川社長に聞きます。
全特は、任意団体であるのに局長の採用に口出しをしているような状況があります。全特の研修に出なければ局長を諦めざるを得ないということも起きています。局長の選考採用に支障を来しているんではないですか。社長は全特の研修の存在は予算委員会で認められましたが、全特が人物調査及び面接を実施しているその実態について徹底調査すべきではないでしょうか。どうですか。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
局長会におきまして、郵便局長となり得る候補者を探し、その者に対して勉強会や研修を行っているということは聞いております。
ただし、採用に関しましては、本人の適性や能力に基づき会社が厳正に選考しておりまして、郵便局長会が認めた人物であるとか、政治活動に賛同することや配偶者の有無などを採用の基準と、そういうことにはしていないものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
じゃ、社長、もう一度聞きますが、これだけ複数の証言があるのに、この採用の実態、この全特が人物調査及び面接を実施しているかどうか、その問題については調査の対象にはしないということですか。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
当社では厳正に採用選考を実施しているところでございまして、局長会が独自に採用しているマニュアルは、当社は一切関与をしておらず、選考採用には全く関係がないというものでございます。
【伊藤岳 参院議員】
これじゃ調査になりませんよ。ちょっとお聞きします。
当社に関係ないと言われたけれども、マニュアルにはこうも書かれているんです。研修において、日本郵便の役員、支社幹部などから、講話などを通じて指導すると書かれています。日本郵便の役員、支部幹部が全特の研修会で講話しているんじゃないですか。関わっているんじゃないですか。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
一般的に申し上げまして、外部の団体からの依頼により、当社役員や社員が講話を行うということはございます。局長会からの依頼に応じて講話をするようなこともあるものと認識をしております。
【伊藤岳 参院議員】
では、全特の採用のスキームに乗っちゃっているということじゃないですか。何で調べないんですか、この問題を。社長、駄目ですよ、そんなことじゃ。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
先ほど御説明を申し上げましたとおり、局長会の研修を受けたかどうかが当社の局長採用の選考に影響することはございません。
一般論として申し上げれば、当社社員などがその業務の内容などについて外部の求めに応じて講話をすること自体、直ちに問題となるものではないと考えますので、一律に外部の講話を禁止するとか調査するというような性質のものではないと考えてございます。
しかしながら、今回委員からもこうした御指摘をいただきましたので、採用に局長会が関与しているような誤解を与えるようなことがないような講話の在り方などを検討してまいりたいと思っております。
【伊藤岳 参院議員】
社長、何が厳正な公正な採用ですか。これ全然複数の証言で違っているじゃないですか。日本郵便、あなたの社員がうそついているというんですか。ちゃんと調べなきゃ駄目ですよ。
マニュアルではこうも書いています、配偶者を同席させて面接を実施させると。このことについて、厚労大臣は記者会見の中で、支持政党や家族に関することなどを採用基準とすることは就職差別につながると述べられましたが、これ当然のことだと思います。
衣川社長、就職差別に当たると思いませんか、これ。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
私ども日本郵便の局長採用における応募様式には、配偶者の有無であるとか家族の状況を記入するような箇所は設けておりませんし、面接時にも、当然配偶者を同席させるようなことはしておりません。
【伊藤岳 参院議員】
じゃ、なぜ全特のマニュアルで就職差別に当たるような夫婦の面接の同席ということを書いているんですか。社長、何でだとそれ思われます。これ、選挙活動のためではないかという指摘ありますよ。衣川社長は、なぜ面接に配偶者を同席させようと思っているのか、どういう経緯でこういうことになっているのか、見解を伺いたい。
【衣川和秀 日本郵政株式会社取締役】
局長会の活動としてされていることかと存じますので、私どもでは承知をしておりません。
【伊藤岳 参院議員】
これ、大問題だと思います。再度申し上げますけれども、この採用の実態、これ、今回の精査、調査の対象にすべきだと思います。複数証言があるんですから。
これでは、全国郵便局長会、全特が、選考採用など先ほど言った三本柱、三本柱の特権を守るために局長採用に対して深く関与していたということになると、私はこの疑いを強くいたします。
もう一つ本当は配りたかった資料があるんですが、このマニュアルの中に、全特が平成二十六年、二〇一四年の十一月二十二日付けで策定をした政治対応の基本的な考え方というものが添付されています。この全特の政治対応の考え方として、こう書いています。私たちの考え方に賛同し、具体的に実践、行動する国会議員などとは適切な信頼関係を構築し、かつ密接に連携してとし、参議院比例代表に組織を代表する候補者を擁立し、関係する組織が一体となって政策決定の場である国会に送り込むように取り組むとされている。
大臣に聞きます。
特定郵便局長を選任するシステムの下で、こうした特定政党の候補者を擁立して国会に送り込む、これ問題じゃないですか。
【金子恭之 総務大臣】
お答え申し上げます。現在、日本郵便におきまして御指摘のマニュアルの内容の精査などを行い、今後、その結果と局長採用との関連などの事実関係について総務省に報告があると聞いておりますので、特定の質問に、あっ、仮定の質問にお答えすることは差し控えさせていただきます。
いずれにしましても、総務省としては、本件についての日本郵便からの報告を踏まえた上で、監督官庁として必要に応じて適切に対応してまいります。
【伊藤岳 参院議員】
大臣、この全特の政治対応の考え方というのは知りませんでしたか。承知していなかったんですか。承知していない。
参議院比例代表に組織を代表する候補者を擁立して国会に送り込むという、この全特の通知は見ていないということですか。
【金子恭之 総務大臣】
今、伊藤委員の発言によって承知をしました。
【伊藤岳 参院議員】
これ、にわかに信じ難いと思います。
大体、総務省、こういう文書を出しているんですよ。日本郵便株式会社に対する監督指針というのを出していて、その中で、郵便の業務、郵便局の活用、郵便局を活用して行う地域住民の利便性の増進に資する業務等を健全かつ適切に営むことにより国民の利益に資することを確保することを目的として、同社に対して適切な監督を行うと定めているんですよ。その同社の中で、日本郵便の中で参議院選挙の比例代表に候補者を擁立して国会に送り込むと。何監督しているんですか、これ、総務省はということになるんじゃないですか。
マニュアルにはこうも書いています。研修において政治活動、選挙活動、地域活動の重要性について理解を深めさせるとして、都道府県単位に自由民主党地域支部を結成する、郵便のですよ、自民党支部を結成する、直前に行われた選挙活動の説明する、政治活動は日頃の地域活動、郵便局での人間関係づくりが大切だということを指導例として書いているんですよ。
大臣、これ、特定政党の候補者の集票のために郵便局の組織を利用する重大な問題ではないですか。どうですか。
【金子恭之 総務大臣】
はい。いずれにしましても、本件については日本郵便からの報告を踏まえた上で、監督官庁として必要に応じて適切に対応してまいります。
【伊藤岳 参院議員】
時間なので、終わります。重大な問題だと改めて指摘します。