議事録

2022年6月2日 総務委員会(電波法・放送法質疑/NHKの受信料値下げ還元目的積立金制度とNHK裁量)

議事録

【伊藤岳 参院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。まず、放送法改正案について、法案は、受信料引下げのために還元目的積立金制度を創設します。経営計画の期間で蓄積された繰越金のうち、総務省令で定めるところの計算額を還元目的積立金として積み立て、次期経営計画の期間においてその積立金を事業収入に組み入れて受信料を引き下げるものです。

 総務省令でNHKが財政安定の観点から留保できる剰余金の基準を定めるに当たり、可能な限り客観的なものとしてまいりたいと大臣は本会議で答弁されました。大臣、この可能な限り客観的なものとは具体的にどういうことですか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 伊藤委員にお答え申し上げます。本法案につきましては、還元目的積立金の積立ての計算方法を総務省令で定める際、NHKの財政の安定のために留保することができる額の上限を具体的に定めることを考えております。

 例えば、総務省の有識者検討会においても、公共放送の剰余金が年間収入の一定の割合を超える場合に積立てを行う諸外国の事例が紹介されておりますが、こうした事例を参考に具体的な検討を行ってまいりたいと思います。

 

【伊藤岳 参院議員】

 可能な限り客観的なものといっても、つまり行政がNHKの収支差額について区別し、扱いを決めるということですよね。

 総務省令による計算額を定める際に、パブリックコメントを行うなど、国民の皆様の御意見も丁寧に伺いながら検討とも大臣答弁されました。このパブリックコメントで一体何を聞くんですか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 お答え申し上げます。パブリックコメントでは、NHKが財政安定の観点から留保できる額の上限を含め、還元目的積立金として積み立てる額の計算方法を定める総務省令の案を作成、公表いたしまして、国民の皆様に御意見をお伺いすることを考えております。その上で、パブリックコメントに寄せられた国民の皆様からの御意見を丁寧に検討をし、総務省としての回答を公表した上で、必要な総務省令を定めてまいる予定でございます。

 

【伊藤岳 参院議員】

 しかし、大臣、このNHKの財政安定とか計算額というのを国民がどこまで判断できますかと私は思います。国民の意見を伺うと言いますけれども、本来は、NHK自身がそもそも意見をよく聞いて、視聴者・国民がNHKに何を求めているかの判断に基づいてNHKが自主的に決めるものではないですか。

 合理的な理由がある場合、剰余金を必ずしも受信料の引下げに充てる必要はなく、NHKに一定の裁量を認める柔軟な仕組みとしていると大臣答弁されました。この合理的な理由とはどのようなものを指すんですか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 還元目的積立金の制度は、剰余金のうちNHKが財政の安定の観点とか必要な資金を留保した上で受信料の引下げの原資に充てるものでございます。

 他方で、本制度においては、総務大臣の認可を受けて還元目的積立金を還元以外の目的のために取り崩すことや、合理的な理由を国会に提出することを前提に、積立金による還元を行わない収支予算を作成することが可能であるなど、NHKにとって状況の変化に柔軟に対応することが可能な仕組みとなっております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 全然具体的に聞こえてこないんですよ。合理的な理由といっても、つまり限定的だということはよく分かりました。

 大臣、一定の裁量をNHKに認めると答弁されました。つまり、一定の裁量を除くNHKの裁量はないということですね。

 

【吉田博史 総務省情報流通行政局長】

 還元目的積立金の仕組みは、今大臣からも答弁申し上げましたとおり、大枠として、NHKが剰余金が生じた場合に一定額を留保して、まずそれでNHKの財政の安定が図られます。その余り、その以上のものについて受信料の引下げに充てるわけですけれども、でも、それについては、まずほかのことに使う必要があれば、それは取り崩すことを認可を受けてやることができます。それは、NHKにおいて何かやりたいと思えば、それ当然きちんとした使途があるということ前提ですけれども、また認可を受けてやることができます。それを基にして収支予算を作成する。つまり、受信料額を含む収支予算を作成する際にも、これを、積立金があるからその分を全部値下げに使いますということをしない場合であっても、それはNHKが収支予算作成の際に合理的な理由を説明すればそれが、そういうこともできるようになっています。

 それは、もちろん大枠としては全て裁量があるわけではございませんが、そういう意味で一定の裁量と申し上げておりますが、柔軟な仕組みになっているところでございます。

 

【伊藤岳 参院議員】

 つまり、局長今丁寧に説明していただきましたけれども、NHKには一定の裁量しかなくなるということです。

 大臣、そういうことですよね、今局長の話は。大臣の見解はどうですか。一定の裁量しかなくなるんでしょう。

 

【吉田博史 総務省情報流通行政局長】

 この大枠、還元目的積立金という大枠自体は、その中での当然裁量でございます。当然、何かそれを別の用途に使う場合には、きちんとNHKとして説明責任が果たせるようなものでなければ当然ならないということでございます。

 

【伊藤岳 参院議員】

 大臣、答弁立たれませんけれども、つまり、局長の話幾ら聞いても、一定の裁量をNHKに認める、つまりそれ以外のことはNHKの裁量はないということ以外何物でもないと思いますよ。

 前田会長に聞きます。今お聞きのとおりですよ。総務省が、一定の裁量を除くNHKの裁量はないという話です。受信料を含めてNHK予算というのはNHKが自主的に判断をしてきました、これまで。NHKの裁量が制限されることになるんですよ。会長として、それでいいんですか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 お答え申し上げます。今回の放送法改正によりまして、NHKが予算の策定において裁量を制限されることはないと考えております。

 NHKの収支につきましては、経営計画単位での収支相償が原則でございまして、経営努力などによる黒字の合計が一定の水準に達した場合には視聴者に還元することが私は基本だと認識しております。

 これまではどのような場合に値下げを行うかにつきましてルールが全くなくて、今回の法改正によりまして視聴者の皆様に還元するための仕組みが明確になると考えております。今回の制度は、NHKが自主的に経営努力を行い、その成果を視聴者に還元する方法として総務省に要望したものでございまして、規律ある経営を行うための仕組みとして活用していきたいと思います。

 

【金子恭之 総務大臣】

 伊藤委員、先ほど私御説明申し上げましたが、総務大臣の認可は受けておりますが、還元目的積立金を還元以外の目的のために取り崩すこと、あるいは、合理的な理由を国会に提出することを前提に、積立金による還元を行わない収支予算を作成することが可能である等、NHKにとっては状況の変化に柔軟に対応することが可能な仕組みとなっております。

 合理的な理由については、例えば積み立てられた還元目的積立金の額を受信料の引下げの原資に充てたとしても、その額が一契約当たり数円にしかならず、還元の効果が著しく低いものとなる場合が考えられますが、具体的にはNHKにおいて収支予算を作成する際に検討されることになっております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 大臣、私、そういう話は総務省で決めてほしくないという話だと思いますよ、私、NHKからすれば。まあ会長はどうも違う考えみたいだけれども。

 じゃ、会長、もう一度聞きますけれども、これまでNHKの受信料というのは、また、受信料を含めたNHKの予算というのはNHKが自主的に判断してきたでしょう。これからは違うようになるでしょう。それは認めますよね。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 そのようなことにはならないと思います。

 

【伊藤岳 参院議員】

 何でならないんですか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 予算はあくまでNHKが作るのでありまして、総務省が作るものではございません。

 

【伊藤岳 参院議員】

 NHKが作るといったって、総務省の裁量が入ってくるじゃないですか。そこは私、指摘しておきたいと思います、何遍聞いても同じ答えしか返ってこないんでしょうから。総務省が総務省令で計算額を決める、それに従った予算しか作れなくなるということですよ。会長、しっかりしてほしいと思います、ここは。

 もう一つ、じゃ、聞きます。還元目的積立金を事業収入に組み入れて受信料を引き下げるということになりますが、受信料が引き下がれば受信料収入が減るわけですよね、減った、引き下がった額の受信料収入しか入ってこないから。そうなると、事業規模を縮小せざるを得なくなるのではないですか。質の高いコンテンツの提供など、公共放送が果たすべき役割に影響が出るのではないですか。会長、どうですか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 それと御指摘の点はちょっと全然関係ないと思っております。クオリティーを下げるか下げないかということと還元するというのは別の問題でありますので、それとその御指摘の部分が連関しているとは思いません。

 

【伊藤岳 参院議員】

 受信料が引き下がって受信料収入が少なくなったら、事業縮小しなきゃいけないというふうになりませんか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 受信料の水準が下がるということは、もちろんベースの収入が減るわけですから、それに合わせて経営をすればいいと私は考えております。ですから、それは、どんどん受信料収入が増えて膨張し続ければいいということではないと私は思います。

 

【伊藤岳 参院議員】

 今、会長が言われたとおりですよ。それに合わせて経営すればいいとなっちゃうんですよ。

 今、国民のNHKへの信頼はどうでしょうか。NHK自身が実施した放送に関する調査、これ二〇一九年の調査を私拝見しました。正確、公平公正な情報で貢献することを示す公共的価値は、実現しているが一六・九、期待しているが四八・一。実現しているという数値が極めて低いんです。

 公共放送の要ともいうべき正確、公平公正がこのような低い数値であるというのは、ジャーナリズムとしての機能不全が起こっているということの以外何物でもないと思います。当委員会でも繰り返し指摘してきたかんぽ不正販売問題を報じた「クローズアップ現代」の二回目の放送番組を取りやめたことは、国民のNHKに対する信頼を更に失墜させたと私は思います。

 その上、経営効率化。質の高いコンテンツが提供できなくなれば、公共放送NHKとして果たすべき役割に重大な影響を及ぼす決定的な事態に陥ることになるのではないかと私は思います。

 ところで、前田会長、経営計画の中に新しいNHKを盛り込んで、スリムで強靱な経営体質を位置付けられました。事業規模の一部に当たる七百億円の削減が会長によって宣言されました。

 文芸春秋六月号に「紅白打ち切りも 前田会長よ、NHKを壊すな」と題する職員有志一同の寄稿記事が掲載されています。この中で、コストカットの影響を受けているのが災害報道ですと告発があります。公共放送の要ともいうべき災害報道がコストカット、事実なのかと私不安に駆られました。記事では、全国各地に配備していた十二機のヘリコプターを、維持費が高過ぎるとヘリコプターの経費を問題視して、既に松山放送局で打切りを決めていますとあります。

 NHK、全国各地に配備されているヘリコプターは現在何機配備されているのか、減らされているとすればなぜ減らされたのか、関連して、ヘリコプターの関連経費というのは削減されているんですか。どうですか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 お答え申し上げます。御質問の内容、月刊誌に掲載された記事と思いますが、既に会長会見でも申し上げましたが、かなりの部分が事実無根でございます。

 松山放送局には、災害報道用のヘリコプターは当初から配置しておりません。そういうことで、事実ではございません。

 私は、命と暮らしを守る報道の強化を一度も軽視したことはございません。災害日本で要するにどうすれば迅速に報道できるかということで、このヘリコプターにつきましても、予算を見ながら、どういう形が一番合理的かというのを詳細に検討いたしました。

 自分のところだけでできるのと、あと、例えばいろんな公共機関がヘリを持っています。連携できないか、民間と連携できないか、そういうのを含めて検討しております。NHK自体でも、ヘリの航続距離がそれぞれ違います、機種によって違いますし、どこの拠点でいつ災害が起こるか分からないわけですから、一番いい状態で離陸できて、どこまで行けるかというのを全部シミュレーションした上で、今最適の配備になるように見直しをしました。

 これは、非常に、ヘリ、常時飛ばせるということは非常にコストも掛かります。ちょっと具体的に今数字持っていませんけれども、コストは掛かりますが、それを少なくするのが目的ではありません。そういうことで見直しをいたしました。それが事実でございます。

 

【伊藤岳 参院議員】

 ヘリが減っているのかどうかというのは明確に答えられませんでしたけれども、見直すということですから、私、災害報道、非常に危なくなると思います。私、会長、文芸春秋に書いていることが全部正しいと思って私いませんよ、私も。不安になったから聞いているんです。だから、別にいきり立たないで、丁寧に答えていただきたいと思います。

 災害報道というのは、公共放送の重要な使命であると思います。災害報道に係る経費の削減などについて、見直しなどについては、私、NHK予算審議の際に担当者からも説明されませんでしたよ。また、そういう見直し、今会長言ったような見直しの項目になっているということも聞きませんでした。

 そこで、提案なんですけれども、災害報道に関わる予算について、その内訳とか考え方などについて、NHK収支予算の国会審議に当たって、特に分かるように我々委員にも国民にも示すべきではないかと思います。経費区分など工夫も必要となるかもしれませんが、検討課題としていくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 分離会計にするのってちょっと非常に手間が掛かって複雑になりますので、国会審議の過程で分かるような説明をさせていただきたいと思います。

 

【伊藤岳 参院議員】

 是非検討を進めていただきたいと思います。

 さらに、記事では、職員採用における放送、記者やディレクター、技術、管理の職種別採用の廃止で一括採用となったことの現場への影響を示して、番組制作は高い専門性と高度なスキルが求められ、私たち職員は専門知識を生かし、お金と時間を掛けて、テーマを深く掘り下げて番組制作をしてきた、それこそが民放にはまねできないNHKの存在価値だという自負がありましたとの声が紹介されています。

 会長、この声、どのように受け止めていますか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 雑誌の御指摘の部分、職員有志一同ということで実名のない匿名記事でございますので、ここはちょっと何ともお答えのしようがございません。

 ただ、御指摘のこの番組制作に関してこういうお話がありますが、ここの部分については、私はその部分はそうだと思います。別に全く否定はいたしません。

 

【伊藤岳 参院議員】

 職員一同ということで事実かどうか分からないという話がありましたけれども、NHKの理事会の議事録見ておりましたら、二〇二一年十一月の理事会において、林理事が、スリムで強靱なNHKの会長特命プロジェクトに対して職員の不安や当惑の声がかねてからありますと、かねてからありますと報告をされています。

 ですから、会長、当然職員の中に不安や当惑の声があることは知っているわけですよね。雑誌の職員一同が事実かどうかは別として、職員の中に声があることは承知しているはずだと思います。だったら、私は、職員の不安や当惑の声をむしろ率先して会長が聞くことが大事だと思います。そうしないと、理事会の報告事項は軽いものとなってしまうんじゃないでしょうか。

 職種別の採用の廃止、一括採用、これは本当にNHKが良質なコンテンツを作成していくというNHKの使命に関わる大問題だと思いますが、今後どのように対応していくおつもりですか。

 

【前田晃伸 日本放送協会会長】

 御指摘の理事会での議論は私ももちろん承知しておりまして、これは、当時、人事担当の役員が当然改革をやっている過程で職員の方の御意見も幅広く聞いておりましたので、私も十分承知の上で理事会で議論をしたわけでございます。私は、そのときに、議事録にも書いてありますとおり、もちろん職員の声を理解した上で、ただ、NHKの改革は今やらないと、十年たってから改革をしたんでは間に合わないと思いました、このタイミングでやらないと二度とタイミングが来ないと思っておりますと私は答えました。

 いろんな分野で抜本的な改革をやる過程でもちろん不満があるのは当然分かりますが、その不満を持たれる方々に対しては、私は、先ほどもお答えしましたが、年間で約二十回、延べ人数にして一万人の職員の方々、それから組合の方々とも直接対話をずっとしました。今までNHKの経営でそのようなことをやったことは一度もないと思います。十分私は意見聞いたと思います。

 私は、そこら辺を理解した上で改革をする必要があると思います。この改革を乗り切らないと、世帯数が減ってきて日本全体がシュリンクする中でNHKだけ生き残るという、そういうことではないと私は思っております。そういう経営努力が必要だと私は確信しております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 会長、職員の声聞いてきたともう自負をされているのであれば、特に私は思うのは、NHKというのは、民間企業のように経済合理性を求めるだけでなくて、社会の公器として国民の知る権利に応えなきゃならないと思うんですよ。そのためには、災害報道とか国会中継とか、最近国会中継も少なくなりましたけれども、採算度外視で取り組むべき仕事があると思いますよ。ですから、改革、改革と言うんだけれども、やっぱり公共放送としての役割、これは是非しっかりと多くの声を受け止めて実施していただきたいと思います。

 次に、法案は、受信料を締結しない者に対する割増金制度を創設する、鉄道の不正乗車、きせるに相当する二倍程度の割増しが想定されています。

 NHKにお聞きします。

 本会議で、昨日、大臣が、割増金制度をもって一方的に支払を求めるのではなく、引き続き丁寧な説明に努めていただく必要があるという点について変わるものではないと答弁されました。NHKも同じ見解でいいでしょうか。

 

【正籬聡 日本放送協会副会長】 

 お答えいたします。割増金の具体的な運用方法につきましては、会計や法律の専門家で構成しています、会長の諮問機関でもあるNHK受信料制度等検討委員会の知見も得ながら今後検討を進めてまいります。

 割増金の運用に当たりましては、総務省の有識者会議におきましても慎重な対応をすべきと指摘されているところでありまして、NHKとしては、視聴者の皆様への丁寧な説明に基づいて適切に運用してまいりたいと考えております。

 受信契約の締結におきましては、NHKの価値ですとか存在を理解していただいて納得して契約していただくことを基本としていまして、割増金が導入されたとしても、この方針に変わりはございません。

 

【伊藤岳 参院議員】

 割増金制度はどのような場合の適用を想定しているんでしょうか。あくまで例外的に適用する考え方でよいのか。昨日の本会議の答弁の中では、病気等、正当な理由のない場合などを挙げられていましたけれども、例えば受信料を支払いたくないという方には割増し制度、これ適用するんですか、どうですか。

 

【正籬聡 日本放送協会副会長】 

 お答えいたします。今、先ほどもお話ししましたとおり、受信契約の締結におきましても、NHKの価値とかコンテンツの価値とか存在を理解していただいて、納得して契約していただくことを基本としております。

 割増金が導入されたとしても、この方針に変わりはございません。

 

【伊藤岳 参院議員】

 つまり、支払いたくないと言っている方にも理解を求めていくと、一方的にはしないということの答弁だと受け取りました。

 こういう方々に対する対応こそ、私、NHKが問われていると思うんですよ。受信料制度は視聴者・国民の理解と納得によって支えられるものでありますし、視聴者・国民に対して公共放送の意義、受信料制度の意義を丁寧に説明し、理解と納得を得られるようにすることが重要だと思います。

 私、当委員会でNHKの受信契約、受信料の収納に当たる地域スタッフの方々の声を紹介しましたけれども、その中で、地域スタッフの方は、私たちは、国民の中にNHKへの不信がある中で、公共放送の意義、受信料制度の意義などを語って受信契約をつないできた、私たちの存在がなければ間違いなく受信契約も収納率も下がると言われていました。

 既に、NHKは地域スタッフを廃止するとしていますが、受信料納入業務の外部委託ではなくて、NHK自身がこうした専門スタッフを内製化して育てるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

【正籬聡 日本放送協会副会長】 

 今御指摘のとおり、NHKの契約を結ぶということに当たりましては、NHKのコンテンツの価値、それを、存在価値を認めていただく、そういったことを消費者リレーション、先ほどの審議でもお伝えしましたけれども、コンテンツを使ったり、そのコンテンツの価値、命と暮らしを守るための様々な、防災教室とかそういうこともやっていますけれども、そういった視聴者リレーションも通して理解を深めていく、そして納得してお支払いしていただく、そのことを繰り返していくことが重要かというふうに考えております。

 

【伊藤岳 参院議員】

 是非そういう対応を強めていただきたいと思います。

 最後に、電波法改正案について。

 法案は、電波監理審議会が電波の利用状況調査の評価を行うために技術開発の知見を有する委員によって構成された部会を設置するなど、機能が強化をされます。

 私は、本会議で、電波監理審議会委員と企業のつながりについて大臣に質問しました。大臣は、電波監理審議会委員は、電波法において、放送事業者、認定放送持ち株会社、電気通信事業者、無線設備機器製造者、販売業者などや、その役員は、本審議会委員となることができないとされている、設置する部会の人選についても、こうした法の規定を踏まえてと答弁されましたが、実は私が聞きたかったのはそこではないんです。

 大臣にお聞きします。電波監理審議会委員に大学の識者などを選考したとしても、産官学協同のコンソーシアムに加わっていれば、ほとんどの場合、その学者さんと企業のつながりがあるということになります。こうした場合も電波監理審議会委員になり得るんでしょうか。どうですか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 お答え申し上げます。本審議会の委員は、先ほど御紹介いただきましたように、電波法におきまして、放送事業者、認定放送持ち株会社、電気通信事業者、無線設備の機器の製造業者、販売業者などや、その役員は、本審議会の委員となることができないこととされております。産学官協同のコンソーシアムに参加する学識経験者や研究者については、これのみをもって電波法上の欠格事由に該当するものではございません。

 いずれにしましても、今後の委員の人選については、本法案をお認めいただいた場合には、中立性、公平性に懸念を抱かれないよう適切に行ってまいります。

 

【伊藤岳 参院議員】

 つまり、排除をされないと、現時点では、ということですから、今後の検討が私求められていると思います。

 大臣は昨日の答弁で、電波監理審議会の機能を強化し、主体的に電波の利用状況を評価、提言できる仕組みを導入するなど、更なる透明性、客観性を確保するとも答弁されました。

 この更なる透明性、客観性の確保とは具体的にどんなことですか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 お答え申し上げます。本法案では、電波の有効利用の程度の評価を第三者機関である電波監理審議会が新たに行うこととしており、さらに、評価のプロセスの透明性を確保するため、本審議会において事前に評価基準を含めた方針を定め、公表することとしております。

 こうした枠組みにより、電波の有効利用の評価について、更なる透明性、客観性が確保されるものと考えております。

【伊藤岳 参院議員】

 時間ですので、終わります。

 

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】

 私は、日本共産党を代表して、電波法及び放送法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 まず、放送法についてです。

 第一に、還元目的積立金制度の創設です。

 経営計画の期間中に生じた繰越金のうち、総務省令に基づき計算した金額を除いて受信料引下げの原資とするものです。NHKの予算編成に行政、政権の介入を招きかねず、NHKの自主・自律性を脅かすものであり、反対です。また、受信料値下げのための予算編成が迫られれば、質の高いコンテンツ作成への影響は避けられません。

 第二に、受信契約の締結に応じない者を対象にした割増金制度の導入です。

 受信料の支払率の向上は、視聴者に対して公共放送の意義を丁寧に説明し、理解と合意を得られる努力を貫いて取り組んでいくべきです。割増金制度の創設は、公共放送としての在り方に重大な支障を与えるものとなります。

 第三に、新たに中間持ち株会社を設立して、NHKの子会社、関連会社などの業務の効率化、コストカットを進めることです。業務の効率化、コストカットありきで支配するやり方は、行うべきではありません。

 続いて、電波法についてです。

 新たに外部の執行機関に対して電波利用料を使った補助金を交付し、それによって企業の技術開発の支援を行う仕組みを創設するものです。

 電波利用料は、電波利用の免許を受けた者から徴収する共益費としての性格を有し、国民が広く電波を利用しやすくするための施策に使われるべきです。この補助金によって支援を受けるのはビヨンド5Gの技術開発を行う企業であり、国際競争力の強化を視野に入れたものです。電波利用料の性格を超えたもので、こうした使途の拡大には反対です。

 なお、電波監理審議会の機能を強化し、進展が著しい技術開発の知見を有する委員で構成される新たな部会を設置するとしていますが、電波の再割当てに当たり企業とのつながりが排除されなければ、公平中立な判断に懸念が生じることになります。

 最後に、放送法改正案、電波法改正案は、いずれも重大な内容を持つ全く性格の異なる法案であり、それぞれの改正案として本来国会に提出し、十分な審議を保障すべきであることを述べて、反対討論といたします。