議事録
【伊藤岳 参議院議員】
日本共産党の伊藤岳です。参考人の皆さん、本日は貴重な御意見をありがとうございました。
北岡参考人は、インド太平洋、また日本の安全保障において東南アジア、ASEANが極めて重要であると事前資料の中でも書かれています。また、地域秩序の成功のためには、参加国の平等を含め、健全な原則が必要であると述べられて、ASEANの原則についてASEAN憲章を例に引いて紹介されています。ASEAN憲章の中には、国連憲章、国際法、国際人道法の支持という原則がありますが、これは今日のロシアのウクライナ侵略の対応との関係でも非常に大事な立場だと思います。
私、ASEAN憲章の中で特に注目しているのは、共通の利益に重大な影響を与える案件に関する協議の強化という原則についてです。このASEAN憲章のこの原則について、北岡参考人の御所見をお聞かせいただければと思います。
【北岡伸一 東大名誉教授】
協議の強化というのはどこにでもあることでございまして、その裏側は、ASEANの合意、一つの大きな原則はコンセンサス重視で、みんなが合意したことしか決定にならないんですよね。ですから、十か国が完全に合意するというのはなかなか難しいので、ですから、例えば中国が南シナ海に出てきたときにこれを非難するのかしないのか、あるいはどれぐらいの強い言葉を使うのかでいつももめるんですね。
ですから、中国寄りのカンボジア、ラオスとそうでない国々の間でいつもここがもめるんです。ですから、協議を尽くすというのは大変良いことなんですけれども、これは一方でそのコンセンサスしか物が決まらないからずっと協議しているということでもあって、私は、したがって、ASEANとの緊密な関係は重視するし、ASEANの一体性は重視するけれども、ただ、それだけだといつまでも前に進まないから、ASEANの中の一番人口の多いインドネシア、二番目のそれぞれ一億あるベトナム、フィリピンといろいろ組んで物を動かすのも並行してやった方がいいんじゃないかということを申し上げている次第です。
【伊藤岳 参議院議員】
御所見ありがとうございました。ただ、本当にその地域的な平和を維持するための協議の強化というのはASEAN諸国から学びたいなというふうに思って、先生の事前資料も読まさせていただきました。
寺島参考人は、先ほどのお話の中でも、沿岸域総合的管理で地方創生、海の安全を進めることの重要性を語っておられました。これ、沿岸の陸域、海域を沿岸域として、環境、生態系の保全とか、持続可能な開発利用を進めるということだと私、理解をさせていただきました。
事前資料の中で、先ほど石川議員の質問の中にも出てきましたけれども、沖縄県の竹富町の事例が紹介されておりました、先ほど先生もちょっとお話しされましたけれども。ここの竹富町の場合、サンゴ礁海域は河川と同じように日常的な生活域であるから町が実質的に管理をしていると、その管理をきちんとするために、そこを町域に編入をして地方交付税の算定面積に入れる、地方交付税で措置するということを総務省に二度にわたって申請したけど却下された。
私、これ、地方交付税で沿岸域を措置するというのは、これ検討に値するというふうに先生の事前資料を見て思いました。実際、この竹富町が沿岸域をどのように管理をされているのか、また費用負担は現状どうなっているのか、ちょっと詳しく教えていただけないでしょうか。
【寺島紘士 日本海洋政策学会顧問】
ありがとうございます。日本の長い沿岸域の中で、地元の市町村が、特に市町村が町役場でというんではなくて、もう地元の関係者がそれに参加して協議会のようなものをつくって、それから町の計画として沿岸域の管理計画、竹富町の場合には沿岸域というふうに言わないで竹富町海洋基本計画というのを作って、熱心に取り組んでおります。
竹富町というのは、あそこに竹富島というのがありまして、それが有名ですけれども、竹富島だけではなくて幾つかの島を、何というんですか、町域とする町なんですね。したがって、町役場は実は石垣島にあるんですけれども、要は、幾つかの島がある、その間の海域も自分たちのまさに日常の生活の場、活動の場なので、そこを含めて竹富町の海洋基本計画というのを作って、そこでどういうふうに保全したり利用したりしていくのかという計画をもう作っている。たしか、もう私の承知している限りでも随分長く海洋基本計画というのを作ってやっております。
ですから、何というんですかね、単に目の前の海だからというのではなくて、まさに日常的な生活の場として使っているということであります。これはちょっと東京とかこういう都心部にいるとなかなか想像しにくいんですが、行ってみると本当に皆さん、自分たちの周りの海を自分たちの生活の場として使っているというのはあちこちのところでやっておりまして、私どももそういう地元の取組を一緒になって、海を生かした町づくりというようなことで一緒になって進めるというようなことをずっとやってきましたんですが。そんなことでよろしいでしょうか。
【伊藤岳 参議院議員】
ありがとうございました。地方自治体任せにしないで、沿岸域の環境、生態系の保全に国も関与してしっかり取り組むというのは大事だなというふうに思いました。
事前資料の中で、アメリカがこの沿岸域の管理では先頭を切っているという話が書いてありましたが、海洋交付金ですか、という制度があるというふうに書いてありました。沿岸域を管理するに当たってのこのアメリカの海洋交付金というのがどんな活用事例があるのか、教えていただけますか。
【寺島紘士 日本海洋政策学会顧問】
ありがとうございます。アメリカの取組はかなりもう世界の範としてよく知られていると思いますけれども、いわゆる、私もちょっとこの今日意見書の中で書かせていただきましたけれども、やはり沿岸域というと、それは沿岸域の問題だからといって沿岸域だけに任せちゃうというのではなくて、これはまさに海との間の沿岸域というのは国の問題でもありますので、国が基本的な政策や方向性を決めて取り組む、だけど実際に取り組むのはその沿岸の地域の人たちが主体になって取り組むということで、アメリカの場合には政府、政府といってもあそこは合衆国ですから、要するに全体のことはワシントンにある政府の方が沿岸域の総合的管理について、そういうことを取り組む地域の取組を尊重するというか、ちゃんと計画が出てきて、それを合衆国の方で認めたら、今度はそれに基づいて地域の方でそういう取組を進めるときにはシーグラントという制度がありまして、それに必要な資金はそのシーグラントとして合衆国の方から拠出されると。もちろんそれで全部済むわけではないと思いますけれども、そういうものを使って地域では沿岸域の総合的管理を進めていくという、そういう仕組みができております。
何か、私は必ずしもそっちは詳しくないんですが、ランドグラントというのもあって、要するにそういう、何というのか、支援金というようなものをやる制度がアメリカでは進んでいるようです。それを、ランドグラントの仕組みを海にも適用してやるということで、あちこちでそういう取組が実際に進んでおります。
最初によく引き合いに出されるのは、サンフランシスコ湾計画という、最初は地元の人たちが取り組んで、今カリフォルニア州の法律に基づいてそういうものをやっている例が、割とよく、国際的に、沿岸域の総合的管理、ICMというとよく代表例のように出されますけれども、そのいろんな、ああいうサンフランシスコ湾のような大きな規模だけじゃなくて、そのやり方を、国あるいは州あるいは県、そして地方の市町村のような自治体というのが重層的に取り組んでやると。ただし、方針とかそういう仕組みは国の方でつくらないとなかなか進まないところもありますので、同時にその支援金、グラントも出すというような仕組みですね、それが各国の取組の一つのモデルになっております。
【伊藤岳 参議院議員】
ありがとうございました。今後の日本の海洋政策に生かさせていただきたいと思います。ありがとうございます。