議事録

2022年3月16日 総務委員会①(スーパーホテルの消防防火管理について)

議事録

【伊藤岳 参議院議員】
 日本共産党の伊藤岳です。
 スーパーホテルチェーンの防火管理業務の実態について、当事者の方からお話を聞いてきました。今日は以下、質問をしていきたいと思います。
 小宮消防庁次長にお伺いします。
 消防法、消防法施行令では、一定の要件を超える防火対象物、ビル、ホテルなどには防火管理者を定めることになっている、説明をしていただけますか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 防火管理者は、防火管理に関し消防計画を作成し、当該消防計画に基づいて消火、通報及び避難の訓練の実施、また消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備など、防火管理上必要な業務を行わなければならないとされております。

【伊藤岳 参議院議員】 その消防法施行令では、防火管理者について平成十六年、つまり二〇〇四年に改定をされまして、遠隔の地に勤務していることその他の事由により代理選任を可能とする規定が加わりました。
 消防庁、この消防法施行令第三条第二項の防火管理者の選任に関する規定はどのような社会情勢や環境の変化の中で改定されたものですか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 複数の建物を一人で管理されている場合などで、防火管理上必要な業務を遂行することができる者が勤務又は居住していない建物などが出現したことなどの経済社会状況の変化などに応じまして、防火管理者の業務を外部に委託することを可能としたものでございます。

【伊藤岳 参議院議員】 つまり、マンションを多数所有、運営するなど、業務形態の急増、こういう業務形態の急増など、社会情勢、環境の変化を受けて消防法施行令が改定をされたということだと思います。
 この間は、一連の規制緩和の中で、社会の各分野でアウトソーシング化、業務委託が広がっています。ホテル業界においても新しい業務形態が出現をしています。
 全国展開をしているスーパーホテルチェーンは、ホテル丸ごと一棟の運営を行う支配人、副支配人を男女ペアで募集をしている。そして、その募集に応じた男女ペアの支配人、副支配人と業務委託契約を結んでホテル業務を任せる方法を採用しています。ホテルの中には支配人、副支配人の1LDKの住居も備えているそうです。
 スーパーホテルの防火管理者は、業務委託契約をした支配人、副支配人を選任している店舗がほとんどです。首都圏青年ユニオン、スーパーホテル分会の調べでは、全百五十八店舗中百五十二店舗、つまりほとんどが、ほとんどこうした選任となっています。私の地元埼玉にも六店舗があります。
 消防庁、この社内選任の正規雇用の者ではなく、業務委託の者を防火管理者に選任することは可能なのでしょうか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 防火管理者につきましては、消防法第8条により、建物のオーナーなど管理について権原を有する者が政令で定める資格を有する者のうちから定めることとなっております。
 その資格につきましては、消防法施行令におきまして、防火管理講習を修了するなどの一定の知識を有するとともに、当該建物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあることを要件として定めておりまして、社員か業務委託契約の者かでその適否が判断されるものではございません。

【伊藤岳 参議院議員】 正規か業務委託かは問わない、こういうことでありました。要は中身、実態だということですよね。
 消防法第8条では、防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を、管理その他防火管理上必要な業務を行わさなければならないとされていますが、これは間違いないでしょうか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 間違いございません。

【伊藤岳 参議院議員】 この中にあります、消防法8条にありましたように、防火管理に係る消防計画は防火管理者が作成するということにされていますよね。
 私、先日、スーパーホテルで支配人、副支配人として業務委託契約を結んでおられたお二人からお話を伺う機会がありました。首都圏青年ユニオン労働組合スーパーホテル分会に所属する男女二人です。その方によりますと、スーパーホテルの場合は消防計画についてはホテル側が策定及び届出をしている、防火管理者だという私たち支配人、副支配人は業務の範囲とは認識していないので、消防計画は私たちは作成していません、見てもいませんと言われていました。
 消防庁、防火管理者が消防計画を作成していないんです。消防計画の存在も知らされていないという話なんです。こうした事例が当たり前となっているならば問題だと思いますが、どうですか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 消防法施行令第三条の二第一項では、防火管理者が防火管理に係る消防計画を作成し、所轄の消防長又は消防署長へ届け出なければならないことと定められておりますことから、防火管理者が消防計画を知らされていないというのは適切ではございません。
 こうした事実につきまして消防本部が立入検査により覚知した場合には、消防計画に基づく防火管理の実施を指導するなど、適切に対応がなされるものと承知しております。

【伊藤岳 参議院議員】 
それは既に実例があります。是非しっかりと見ていただきたい。
 首都圏青年ユニオン労働組合スーパーホテル分会によりますと、ホテル側が策定及び届出をした消防計画には、業務委託を結んでいる支配人、副支配人が365日24時間の防火体制を担うということが記載をされていたり、定時巡回や、夜間のですね、夜間の定時巡回や宿直日誌の記録の業務を行うとされているそうです。
 ところが、支配人、副支配人らはその消防計画の存在自体知らない可能性がありますから、また、業務委託契約上では夜間は就寝ということになっているそうです。寝ていては防火管理上の業務は行えませんよね。どうですか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 365日24時間の防火体制を担うことですとか定時巡回や宿直日誌の記録といったことを防火管理上必要な業務として消防計画に定められているにもかかわらず、それが適切に行われていないということを消防本部が立入検査などで把握した場合には、消防本部による指導の対象となり得るものと考えております。

【伊藤岳 参議院議員】 お話を聞いた支配人、副支配人だった方も、夜間は就寝していました、消防計画を見せてもらって初めて自分が夜間に防火管理業務を行うことになっていることに気付いたと話しておられました。
 消防庁、消防計画に記載されている防火管理上必要な業務を履行できないホテルが存在する、これ、防火管理上危険なことではないですか。認識をお聞かせください。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 防火管理上必要な業務として消防計画に定められていることが防火管理者によりまして適切に行われていないということであれば、それは消防本部が立入検査などで把握いたして、それを消防本部から指導の対象ということになり得ると考えております。

【伊藤岳 参議院議員】
是非、自治体消防任せにしないで、踏み込んで見ていただきたいと思うんです。
 次のような問題もあるんです。
 スーパーホテルの場合、スーパーホテルの清掃、お掃除、これはスーパーホテルの子会社が担っているそうです。すると、どういうことが生じるのか。スーパーホテルと業務委託契約を結んでいる支配人、副支配人、つまり防火管理者ですね、は、業務委託契約に清掃というのは含まれていませんから、ですから業務委託契約に含まれていない清掃に関しては口出しができないんです。子会社の清掃職員に対して口を出せないんです。防火管理上必要な業務を指示することができないんですね。実際、そういう中で起きたことだそうですが、避難バルコニーの出口等に清掃会社が朝までごみを置いて塞いでいた、注意したけど改善されなかったということが起きているそうです。
 消防庁、防火管理者が防火管理上必要な業務を指示することができない事態が生じています。これ、危険ではないですか。

【小宮大一郎 消防庁次長】 お答えいたします。
 消防法施行令第三条第一項では、防火管理者は、防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者を選任するということとされております。したがいまして、今委員御指摘のような実態がある場合には、これは消防本部による是正指導の対象となり得ます。

【伊藤岳 参議院議員】 実態がある場合には。実態、今日紹介していますので、しっかり対応していただきたいと思います。
 避難通路に物が置かれている問題については、さきの大阪北区ビル火災の教訓でもありましたし、二十年前の新宿歌舞伎町ビル火災の教訓でもありました。支配人、副支配人だった当事者の方々が危ないと感じて必死に声を上げておられるんですね。しっかり消防庁として対応をしていただきたいと強く求めたいと思います。
 金子総務大臣に伺います。
 消防法上、業務委託の者を防火管理者に選任することは可能とのことでしたが、しかし、今紹介してきましたように、実際、ホテルの事例を聞き取りますと、検討すべきこともあるんではないかという思いを強くいたします。大臣は今日の話を聞いてどうお感じになりました。

【金子恭之 総務大臣】 伊藤委員と次長の議論を聞かせていただいておりました。
 個別の案件についてお話しすることは差し控えますが、一般論として申し上げますと、建物の火災を予防するためには、防火管理者を中心に適切に防火管理業務を行っていただくことが極めて重要であります。各消防本部においては、建物への立入検査により消防法令違反を覚知した場合には、法令に基づき適切に指導等を行っているものと承知をしております。
 総務省消防庁としては、引き続き、適切な防火管理体制の確保を図るため、必要な施策を講じてまいりたいと思います。

【伊藤岳 参議院議員】 是非、その後の推移をまたお聞きしたいと思いますので、しっかり対応していただきたいと思います。
 現行の法令では対応し切れない新たな業務形態の事例等が生じているのではないかという問題意識を持って現行法令の点検が必要ではないか、消防法、消防施行令の検討等が求められているのではないか、そういう観点で事に当たっていただきたい。
 最後に、大臣、そのことに見解をお願いいたします。

【金子恭之 総務大臣】 繰り返しになりますけれども、消防庁としても、引き続き、適切な防火管理体制の確保を図るため、必要な施策を講じてまいりたいと思います。

【伊藤岳 参議院議員】 終わります。