議事録

2022年3月23日 地方創生・デジタル社会特別委員会(自治体職員の体制確保、DXと窓口業務)

議事録

【伊藤岳 参議院議員】
 地方創生と自治体職員の体制確保について、まずお聞きします。
 総務省に伺います。
 全国の一般行政部門の職員数は二〇一五年度以降、増員となっています。これは、二〇〇五年度からの集中改革プランで、言わば国策として地方自治体の実定数を削ってきましたが、地方自治体がその役割を果たそうとするなら人員増員が必要だったからであります。
 二〇一五年度以降、約二万六千人が増えていますが、新型コロナ対策、子育て支援、生活保護、防災、地方創生の関連でそれぞれ何人、自治体職員が増員になっていますか。

【山越伸子 自治行政局公務員部長】 お答えいたします。
 平成二十七年以降令和三年までの間、全国の一般行政部門の職員は連続して増加をしておりまして、二万五千九百五十一人の増加となっております。
 その増加要因につきまして都道府県と市町村にお聞きしましたところ、御質問の項目ごとにそれぞれ、新型コロナウイルス関連で六千三百七十七人、子ども・子育て支援関連で一万三千三百三十二人、生活保護関連で二千九十人、防災・減災で千八百八十人、そして地方創生関連では二千八百四十八人の増員となっております。
伊藤岳君 地方自治体の業務が増えてきています。地方自治体は職員を増やさないと業務を担えなくなってきている、職員が足りていないということの表れだと思います。
 内閣府にお聞きします。今後の地方創生関連の施策、事業の展開に従って地方自治体のマンパワーが求められるものとしてどのようなものが考えられますか。

【黒田昌義 内閣府地方創生推進室次長】 お答えいたします。
 地方創生におきましては、これまで、少子化に伴う人口減少に歯止めを掛けるとともに、東京圏への人口の過度な集中を是正するための取組を国と自治体が連携して取り組んでまいりました。起業支援金であるとか移住支援金による地方の起業、移住の促進、拠点強化税制による企業本社機能の地方への移転の促進の施策を取り組んでまいりました。
 今後でございますけれども、この新型コロナ感染症の影響を受けた国民の意識、行動の変化を契機といたしまして、デジタルの活用という観点から、地方の課題を解決するデジタル田園都市国家構想の新しい取組を進めてまいります。具体的な取組、様々な交付金であるとか啓発事業を活用いたしまして、デジタルを通じた地域の課題解決や魅力向上に向けた支援、地方創生テレワークの推進等を行ってまいりたいと思っております。
 今後も、国といたしましては、地方創生の担い手として最前線で取り組んでおられます地方自治体と連携しながら、地方創生の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参議院議員】

 更なる職員の増員が求められているということだと思います。
 今日は、デジタルの中でも私、最も関心を抱いている自治体DXと自治体の窓口業務について牧島大臣と、今日はウクライナカラーで身を包まれておりますが、お聞きしていきたいと思います。
 埼玉県寄居町では、地方創生臨時交付金を活用した協力金等の申請業務に当たって、町役場のロビーに特設コーナーを設け、そこに職員を配置して対応しています。これは、申請の仕方など、困っている住民が多いことが分かったために、丁寧な窓口対応が必要と町が判断したからだそうです。
 地方創生臨時交付金の事業等において地方自治体の窓口と職員が重要な役割を果たしており、人員体制の確保が必要だと思います。窓口業務におけるDXは現在どのようになっているか、どこまで進んでいるのか、まず総務省に聞きます。
 地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況調査、これ、二〇二〇年度版が出されていますが、そこではAIやRPAを業務に導入している、これ実証実験も含む業務に導入している団体数を示していただきたい。また、AIとRPAのそれぞれについて、都道府県、指定都市、その他の市町村で幾つかAIとRPAの主な使われ方について例示していただきたいと思います。

【辺見聡 総務省大臣官房審議官】 お答え申し上げます。
 令和二年度におきまして、AIの導入につきましては、実証実験中として行われているものを含めまして、都道府県、指定都市のそれぞれ約九割において導入されているところでございます。そのほかの市町村では約三割において導入をされております。また、RPAにつきましては、実証実験中を含めますと、都道府県、指定都市それぞれの約九割において、また、その他の市町村では約三割において導入をされているところでございます。(発言する者あり)
 失礼いたしました。主な使われ方でございますが、AIにつきましては、会議の音声データをテキストデータに自動変換することによる議事録の作成や手書きの申請書の文字認識、また、問合せに対するチャットボットによる応答などが挙げられるところでございます。
 また、RPAにつきましては、主な使われ方として、例えば企業などから提出されました請求書のデータを財務会計システムに転記をし、支払帳票を自動で出力をするなど、財務会計分野、税務の分野、庶務事務の分野における定型的な業務の自動化が挙げられるところでございます。

【伊藤岳 参議院議員】 
指定都市での導入割合が高いというお話でした。使われ方としては、AIについては、音声認識による議事録作成、チャットボットによる応答、つまり、これは市民からの問合せにチャットボットで対応しているということですね。RPAについては、定型的業務の自動作成。つまり、自治体職員の仕事の補助手段としてAIやRPAが活用されているということだと思います。
 総務省並びに牧島デジタル大臣にお聞きします。
 総務省のスマート自治体研究会報告書、二〇一九年五月では、住民にとって窓口に来ることは負担、窓口に来なくても所期の目的を実現できないか常に考えるとしています。自治体の窓口業務を廃止するというのが政府の方針なのでしょうか。自治体職員が住民と対面する窓口業務も活用することが必要ではないかと思いますが、総務省、どうですか。

【阿部知明 総務省大臣官房審議官】 お答えいたします。
 自治体の窓口は、住民の多様な相談を受けまして住民のニーズをすくい上げるという重要な役割を持ってございます。他方で、質の高い公共サービスを効果的、効率的に提供する観点から、行政のデジタル化や行政手続のオンライン化の推進を図りまして、そこで捻出された人的資源を職員が自ら対応すべき分野に集中することも重要と認識してございます。
 このため、定型的な申請でありますとか証明書の交付等、デジタル手続の活用で住民の利便性が向上するものについてはデジタル化を進める一方で、住民からの相談については職員が窓口で直接説明や助言を行うなど、窓口の役割はデジタル化を進める中でも引き続き重要なものであると考えてございます。

【牧島かれん デジタル大臣】 コロナ禍におきまして、対面の手続に加えて、接触をしない形でということで、オンラインでの非対面での手続の選択肢を準備してほしいといったような声も重要性として高まっているのだろうというふうには認識をしています。
 今、総務省の方からも御答弁ございましたけれども、デジタルで完結できる方だけではなく、窓口での手続を必要としている方々もおられる、そうしたデジタルの活用によって作業負担の軽減を図ることで、窓口の手続を利用される方々へのしっかりとしたサービスの提供というところにもつながっているのだろうというふうに考えております。
 また、市役所などで窓口に来られた方、その方が申請の記述をしない形でバックオフィスでしっかりとデジタルを活用していただくといったことも便益を享受していただける一つの場面だろうというふうに考えております。

【伊藤岳 参議院議員】 

 今言われましたように、地方自治体の窓口業務、自治体職員が住民と対面する窓口業務もデジタルと併せて併用するということだと思います。
 地方自治体へのデジタル技術の導入は、地方自治体の窓口の持つ役割を認識して進める必要があると私は思うんです。
 幾つか事例を紹介したいと思います。
 私の地元深谷市において、総務省のモデルプロジェクトである窓口申請をオンライン化する実証実験が実施されました。全体の利便性を確認をいたしましたと同時に、高齢者ほど紙の申請より時間が掛かること、他人の免許証に自分の顔写真を付けて顔認証はパスしてしまうことなどの課題も明らかになったそうです。実証実験を受けて深谷市は、窓口をオンラインに一本化するのでなく、対面の窓口を併用するなど、住民それぞれがアクセスしやすい窓口を併用することが現実的との判断を付しています。
 滋賀県野洲市では、くらし支えあい条例を制定し、税金、国保料、介護保険料、市営住宅家賃、上下水道料金、学校給食費などの公共料金を扱う窓口で、住民の生活状態を共有して支援する体制を取っているそうです。担当職員は、生活困窮者の場合、自らSOSを発することも難しくなっている方も多い、窓口業務には生活困窮の対象者を発見して積極的に手を差し伸べるアウトリーチの役割を果たすことが重要だと述べておられます。
 また、全国の多くの自治体で妊娠届出の窓口において自治体独自で設問項目を設けて、例えば妊娠して今のお気持ちはいかがですかとか、援助してくれる方はいらっしゃいますかとか、経済的な不安はありますかなど、職員が面談でコミュニケーションを取って相手との信頼関係をつくりながら当人の状況を把握しています。経済的困難を抱えていたり、夫からのDVの被害を受けているおそれがあると判断した場合、職員がそうした問題を早期に発見し、当人に必要とされる支援策を紹介し、利用を働きかけています。
 こうして地方自治体の窓口は、職員と住民の対面でのやり取りを通じて住民の状況をつかみ、住民に必要なサービスを提供する役割を持っていると思うんです。また、自治体職員が鍛えられ、自治体職員として育っていく場所にもなっていると私は感じています。こうした自治体窓口の持つ役割を認識してデジタル技術の導入を進める必要があると思います。
 AIを実際に活用している現場はどうなっているでしょうか。総務省並びにデジタル大臣にお聞きします。
 川崎市で、AI、人工知能を活用した問合せ支援サービス実証実験報告書、二〇一七年三月になりますが、が出されていまして、その中で、課題として、ディープラーニングによって蓄積された経験値などは複雑なアルゴリズムであればあるほどブラックボックス化する懸念もあり、その修正手法など不明確な部分があるとしています。つまり、自治体職員が処理のプロセスや結果が妥当なものであるかを検証できることが必要ではないかと。
 職員が検証できなければ、住民への責任は果たせないのではないかというふうに思うんです。

 総務省、どうでしょうか。

【辺見聡 総務省大臣官房審議官】 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、自治体の業務におきましてAIを活用、導入をしていくに当たりましては、AIによる処理の結果の妥当性の検証を自治体自身が行うことが重要であると認識をしているところでございます。
 総務省では、昨年六月に自治体におけるAI活用・導入ガイドブックを作成し公表したところでございますが、そのガイドブックにおきましては、AIを導入する際には、AI用にデータを学習したモデルを構築した上で、AIの処理結果について精度の検証を行い、必要に応じて機能の追加や精度の向上のための対策を講じるとともに、試行的に導入し更にその効果を検証すべきとしているところでございます。
【牧島かれん デジタル大臣】 AI等のデジタル技術の活用に当たっては、委員御指摘のとおりでございますが、自治体職員の住民に対する説明責任を果たすという論点も重要であると考えております。
 また、AIのブラックボックス問題についても、問題解決に向けた説明可能なAI等の研究開発など必要な取組を推進することと重点計画の中でも記させていただいております。
 デジタル庁としては、関係省庁と連携し、活用するデジタル技術の利用に当たっての留意点というものを踏まえつつ、デジタル化による住民サービスの向上、業務の効率化、改善に取り組んでまいりたいと存じます。

 

【伊藤岳 参議院議員】 
川崎市の実証実験で使ったのは、AIにあらかじめ学習させていた情報から最適な回答を表示させるというチャットボットでした。AIとのやり取りで完結してしまうのはリスクがある、最終的には該当部署や担当者につながる仕組みがあるとよいという記述もありました。職員と住民のつながりと対話の質が上がるように、AIをツールとして使うことの大事さを示唆していると思います。
 最後に、デジタル外部人材について伺います。
 総務省に聞きます。
 自治体のデジタル人材として、CIO補佐官等に外部人材を任用している自治体数を示していただきたい。また、CIO補佐官等に外部人材を任用する在り方について、条例、規定、条例規則で定めている自治体は幾つでしょうか。

【馬場竹次郎 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答えを申し上げます。
 令和三年九月一日時点におきまして、CIO補佐官等として外部人材を活用している団体は、都道府県で十五団体、市区町村で百一団体となっております。
 また、CIO補佐官等として外部人材を任用するに当たって、服務等の任用規律を条例や規則で定めている自治体の数については把握をしていないところでございます。

【伊藤岳 参議院議員】 是非把握していただきたいと思います。
 例えば、先日の当委員会で紹介しましたけど、地方自治研究機構の自治体DXのマネジメント手法報告書では推進本部の役割というのも示しています。
 いろいろ書いてあるんですが、例えば、推進情報、課題及び解決策の報告、承認である、CIOを座長とし、そのCIOの座長から、組織を挙げて推進する必要があること等を発言してもらう、このとき、座長、つまりCIOには、用意した原稿を読み上げるのではなく、できる限り自分の言葉で発信してもらうように、しっかりと事前レクをするなどと、推進本部の役割が示されています。
 まさに手引きともいう内容だからこそ、自治体のデジタル推進本部には、地域と地方自治体のことも、そしてデジタルのことも精通した自治体の人材が必要ではないかと私は思うんです。
 そこで、総務省並びにデジタル大臣にお聞きしますが、外部人材の活用も必要ではあると思いますが、自治体職員の育成こそが求められているんじゃないでしょうか。総務省、どうですか。

【馬場竹次郎 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答えを申し上げます。
 地方自治体のデジタル化の推進に当たりましては、デジタル分野についての多岐にわたる専門的な知識が求められることから、その推進に向けて自治体職員の育成は重要であると認識をいたしております。
 職員の育成につきましては、J―LIS等と協力をいたしまして、自治体職員が必要な知識を習得できるよう最新の動向を踏まえた研修内容の見直しや新たな研修の創設など研修の充実を図っているところでございます。さらに、自治体に対しまして関係機関の研修情報を取りまとめて提供をし、積極的な活用を促しているところでもございます。
 また、自治体の職員の採用において、例えば、試験区分にデジタル職を設けて、ICTの利活用やデジタル関係の実務に従事する人材を採用している事例もあることも承知をしておりまして、このような先行的な取組事例についても自治体に対して情報提供しているところでございます。
 総務省としては、引き続き、これらの取組を通じ、自治体がデジタル化を推進するに当たりまして必要な知識を持つ職員を育成をすることができるようしっかりと支援をしてまいります。

【牧島かれん デジタル大臣】 国、地方公共団体全体を通じて、政府部門行政官としてデジタル改革を牽引していく人材を確保、育成することは重要であるというふうに考えております。
 国においては、デジタル人材確保・育成計画に基づき、令和四年度から新設した試験区分のデジタル区分などから積極的な人材の採用、必要となる研修の受講や業務経験を踏まえて、計画的に中核となるデジタル人材の確保、育成などに取り組んでおります。
 その上で、デジタル庁としては、国家公務員等を対象として実施している情報システム統一研修の内容、こちらを地方自治体にも共有することや、デジタル庁に地方自治体からの出向を受け入れております。蓄積した経験を出身の地方自治体に戻った後にも活用していただくことなど、総務省とも連携して、地方自治体のデジタル人材育成にも資するような取組を進めてまいりたいと存じます。

【伊藤岳 参議院議員】 
時間ですので終わりますが、行政の現場でデジタルに係る専門性を育成、継承することが大事だということを指摘させていただいて、質問を終わります。
 ありがとうございました。