国政報告

2022年2月2日 国際経済・外交調査会「次世代を担う海洋人材の確保及び海洋に関する国民の理解の増進」(参考人の意見聴取)

[議事録]国際経済・外交調査会「次世代を担う海洋人材の確保及び海洋に関する国民の理解の増進」(参考人の意見聴取)

【伊藤岳参議院議員】
日本共産党の伊藤岳です。
 参考人の皆さん、今日は貴重なお話、ありがとうございました。実は私のひいおじいちゃんが船乗りでして、後を継がずに申し訳ないなというふうに思いながら話を聞かせていただきました。
 松浦参考人のお話の中に、後継者の確保、育成に向けた要望、提言として、船員養成教育機関の拡充、その中に練習船の老朽化の問題もありましたし、賞雅参考人のお話の中では練習船の老朽化の話がありました。実は昨年の五月のこの調査会でも、来られた参考人の方々が練習船の財政的支援を求めておられました。
 船員養成教育において練習船の持つ役割、重要性、先ほど賞雅参考人のお話からすると、船員教育においては必ず持たなきゃいけない設備、まあ義務教育であれば体育館だとか図書館と同じような位置付けなのかなと思いましたが、そういう認識でいいのかどうかということと、また、練習船の老朽化。富山高専の場合は令和七年度から予算が付いたということでありますが、しかし三年後ですし、今日のお話聞きますと、何ですか、これ、ストップだけど前進三とか、これちょっと意味分かりませんけど、外板補修はこれ生徒さんがやっているんですかね。ちょっとその写真ではそんなふうにお見受けしましたが、そんな状況、具体的な状況もちょっともう少しお聞きしたいし、国への更なる要望などありましたらお聞かせいただきたい。
 これ、松浦参考人、賞雅参考人、お二人にお聞きしたいと思います。まず、賞雅参考人、お願いします。

【賞雅寛而(たかまさもとじ)独立行政法人国立高等専門学校機構富山高等専門学 校長】
伊藤先生、どうもありがとうございます。
 練習船、校内練習船は商船教育には欠かせないものだと思っています。それは、昔より重要性を増しているというのは、先ほどから申していましたように、やはり大事に育てられているお子さんが多いものですから、徐々に、一か月乗せて様子を見て、また三か月、四か月乗せて様子を見てというようなことをしていかないと、なかなか商船教育の熟成ができない状況になっているんです。
 実は、二十年ほど前は座学を全部終わってから一年間練習船に乗せるというようなことをやっていたんですけれども、やはりそれではやめてしまうというか、いきなりショックでなかなか海に対応できないというところがありまして、現在は校内練習船を使って習熟させてから大型の練習船に乗せるというようなところをきめ細かくやらないとなかなか学生さんの性質に合っていないということで、そこら辺は非常に丁寧に各商船高専、そこは大学もそうですけれども、やっていると思います。ですから、練習船の教育というのが非常に重要になっているというのは、昔に比べれば重要性は増えているのかなと思っています。
 それから、やはり富山高専の練習船におきますともう二十七年たっているわけですけれども、海水の腐食というのは幾ら整備をしてもなかなかやっぱり止まるものではございませんので、外板が、日本海は海が荒いものですから、それで剥がれてしまって、これは学生が直すわけではなくて、やはりプロの造船のところに行って、造船所に行って直さないとそれは危険でございますので、内部のところは学生が少し手を入れたりいろいろしているんですけれども、構造に関しては造船所で直させていただいて、何とか、だましだましと言うとまた語弊があるんですけれども、使っているという状況です。
 ただし、やはり今回見込みが付いて、何とか練習船を、五校の練習船を、富山は四番目でございますけれども、一番船と二番船は予算がめどが付いたということを伺っていますので、非常に有り難いことかなと思っています。
 以上です。

【松浦満晴 全日本海員組合長】
 今、賞雅委員の方からもお話がありましたように、じゃ練習船がどれだけ必要なのかということでございますけれども、まず、先ほど外国ではどういう教育なのかとかというお話も先生方から質問がございましたけれども、日本の教育という中でいいますと、座学があって、それから乗船実習という船に乗っての学習があった上で卒業をするというようなカリキュラムになっております。
 船員の免状というものは、乗船をした上でその免状を受けれるようになっております。実際に、座学だけでは免状として通用いたしません。車のように、少しの期間座学をやって、実地をやってすぐに免許が出るというような問題ではございませんので、どうしても船での実習が今のカリキュラムの中にでも必要でございます。
 逆に言うと、今現在、それと併せて企業での乗船実習というものも今徐々に進んできております。
 ただ、企業での乗船実習ということになりますと、どうしても事業として船を動かす中で実習をしていきますので、少なくとも教育の場で乗船をして、座学が終わって免許にしてから社会に出ていくという形が一番理想だというふうに思っておりますので、是非ともこの学校での乗船教育というのは日本の教育の関係からすると必要だというふうに思います。
 以上でございます。
【伊藤岳 議員】
非常に練習船の持つ意味、よく分かりました。その練習船がだましだましで使うような状況じゃ良くないと思いますので、国の対応をしっかり求めていきたいと思います。
 海洋基本法の第二十八条では、国は、国民が海洋についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における海洋に関する教育の推進のために必要な措置を講ずるとしています。
 海野参考人にお聞きしたいんですが、学校教育における海洋に関する教育の推進のために必要な国の施策、また、誰もが海洋教育にアプローチできる、例えば水族館ですとか博物館ですとか、そういう社会教育施設の維持、発展、継続のために必要な国の施策など、参考人のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
【海野光行 (公財)日本財団常務理事】
ありがとうございます。
 まず、学校教育の中で必要なことというのは、先ほども申し上げましたが、海離れが今すごく進んでおります。
 具体的に申し上げますと、昔、私たち、先生方もそうかもですが、子供の頃というのは臨海学校って割とあったと思います。今、ほとんどないんです。何が原因か。やっぱり海危険だ、危ないからというところがありますし、まず海水浴に行く方もどんどんどんどん少なくなっているという状況の中で、まずは子供たちを海に寄せる活動というのを復活させる、これがまず第一かなと思っています。まずはそこからだと思っております。そのためには、親御さんが安心して子供を出していただけるような安全体制の構築だとか、あと、ノウハウも我々自身の中にちゃんと蓄えた中でそれを進めていくことが必要だと思っています。
 そのときに、学校教育というお話されましたけれども、先ほども申し上げましたが、やはり学校教育の中に新しいものを何か付け加えようとすると、なかなか難しいところがあります。これ、現実問題、無理と言ってもいいのかもしれません。
 ですので、これは一つ、私たちの施策の一つではあるんですけれども、民間でも学校に対して直接の助成を付け始めました。必要なその海洋教育を行ってくれるところに対して、要は、先生方の知見がなければ、その知見を例えば博物館だったりとか水族館だったりとか、その知見を寄せる、そのための予算だとか、あるいは、先ほどのICTの話もありましたけれども、ああいう形での機材の提供だとか、そういったものも今進めているところです。
 国でやっていただきたいことは何かというところもあるんですけれども、私たちが今そういうふうな取組をモデル的に少し進めておりますので、その辺りを少し、ちょっと見ていただけると有り難いなというところは思います。
 以上です。
【伊藤岳】
 ありがとうございました。終わります。