議事録

2021年4月27日 内閣委員会・総務委員会 連合審査会(自治体のデジタル部門への民間外部人材の任用と地方行政の公正性について)

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。自治体デジタル部門への民間外部人材の任用と地方行政の公正性について質問したいと思います。

 デジタル関連五法案及び標準化法案で、デジタル関連業務を担当する自治体職員について、その任用、権限、服務規程等についての改正はあるのでしょうか。まず、内閣府にお聞きします。

 

【時澤忠内閣官房内閣審議官】

 お答えいたします。内閣府、内閣官房が提出をしておりますデジタル改革関連法案の五法案におきまして、地方自治体職員の任用や権限、服務等に関する改正事項はございません。

 

【伊藤岳参議院議員】

 同じく、総務省、お答えください。

 

【髙原剛総務省自治行政局長】

 御答弁申し上げます。総務省が提出しております標準化法案に伴います自治体職員の任用、権限、服務規程等の改正はございません。以上でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今両省から答弁があったとおり、任用、権限、服務規程などについての新たな法改正はありません。自治体DX、デジタル・トランスフォーメーション推進計画では、地方自治体のCIO、最高情報責任者を補佐する体制の強化として、CIO補佐官などの外部人材の活用を検討するとしています。

 CIO補佐官などの特別職非常勤職員としての任用はあるんでしょうか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。CIO補佐官として外部人材を任用する場合、特別職非常勤職員として任用することも可能でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 特別職非常勤職員は、信用失墜行為の禁止とか守秘義務とか職務専念義務とか政治的行為の制限などの言わば地方公務員法の適用は受けません。また、営利企業への従事、兼業についての法的な制限もありません。

 武田大臣に伺います。自治体の情報システムに深く関与し、その政策決定と執行を行う中枢ポストに民間企業の幹部、職員が任用されることは、ベンダー企業の意思によって自治体行政が影響を受けることにならないか、行政の公正性に懸念をもたらさないか、大臣、どうですか。

 

【武田良太総務大臣】

 自治体がデジタル化を推進していくためには、専門的な知識を持つデジタル人材を積極的に活用していく必要があります。その際、各自治体においては、公務の公平性に疑念を抱かれることのないよう十分留意することが重要であります。一般に、特別職非常勤職員として任用される外部人材には要綱などで服務を含めた任用規律が課され、その職務の公平性が確保されていると承知をいたしております。

 また、現在、外部有識者等から構成される検討会において、CIO補佐官等として外部人材を任用する場合に特に留意すべき事項等について、既に任用している国や自治体の事例を参考にしながら検討しているところであり、今年の夏をめどに自治体に提示してまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 平井大臣にも同様の質問をさせていただきます。今申し上げましたように、政策決定と執行を担う中枢ポストに民間企業の幹部が任用される。行政の公正性に懸念をもたらさないでしょうか。

 

【平井卓也デジタル改革担当大臣】

 民間の人材を受け入れることで公務の公平性に疑念を抱かれるようなことがないよう十分留意する必要があると考えています。例えば、国の行政機関に関して申し上げれば、民間から採用された職員についても、その採用の方法にかかわらず、公正な職務の遂行の維持、職務専念義務の確保、公務の信用保持の観点から、守秘義務、信用失墜行為の禁止など、国家公務員法の服務に関する規定が適用されることになります。

 これに加えて、内閣官房IT総合戦略室では、民間から採用された職員の人事配置について、現在属している事業者については当該職員が妥当性評価及び助言を行う調達案件には入札できない、また、政府情報システムの受注実績のある企業の出身者はその担当としないといったルールを追加的に設け、運用に努めています。さらに、今後、デジタル庁の発足を見据えて、民間から採用された職員がシステム調達に関わる場合の所属企業の入札制限の在り方や具体的な運用方法等について、有識者を含めた検討の場を設けて検討していく予定です。

 いずれにしても、民間の人材を活用することによって公務の公正性が損なわれ、国民の疑念を招くことのないよう努めていくことが重要と考えておりまして、地方自治体においても、総務大臣から答弁のあった総務省が示す留意事項などに基づいて適切に対応がなされるべきものと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今の国の話もありました。また、武田大臣からは手順書をこれから策定するという話もありましたが、既に自治体DX推進計画は今年の一月からスタートしています。そもそも順序が間違っているのではないでしょうか。

 さらに、手順書を作成すると言いますけれども、これ、ガイドラインや技術的助言でしかありません。当然、法的規律も働かない。DXの推進が先にありきで、自治体行政の公正性の確保、地方自治の拡充は後景に追いやられているのではないか、その懸念を深めざるを得ません。総務行政をめぐっては、例の東北新社の問題、NTTからの接待などによって総務行政がゆがめられたのではないかという疑念が未解決のままです。地方行政にそんな懸念を持ち込むわけにはいかない。

 そこで、具体的に更にお聞きします。総務省、CIO、CIO補佐官の現状について聞きます。外部人材を任用している地方公共団体の数は、都道府県、市区町村でそれぞれ幾つでしょうか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。総務省では、例年、地方公共団体における行政情報化の推進状況調査におきまして各地方公共団体におけるCIO、CIO補佐官の任命状況を調査しているところでございます。

 令和元年度において、CIOとして外部人材を任用している都道府県は二団体、市町村は一団体、また、CIO補佐官として外部人材を任用している都道府県は五団体、市町村は三十六団体となっております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 自治体DX推進計画では、市町村がCIO補佐官等として外部人材を任用する場合の経費について、所要の財政措置、特別交付税、措置率〇・五を講じるとしています。従来、自治体のCIO、CIO補佐官等の任用に対する特別交付税措置はあったのでしょうか。また、新たな財政措置は、外部人材の任用を対象に、特別非常勤職員として任用する場合及び外部に業務を委託する場合が対象となるのでしょうか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。CIO、CIO補佐官等の任用に対する特別交付税措置はこれまでなかったところでございます。この度の特別交付税措置につきましては、新たに市町村がCIO補佐官等として外部人材を特別職非常勤職員として任用する場合の報酬に要する経費及びCIO補佐官等の業務を外部に業務委託する場合の委託に要する経費について対象となるところでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 既に私が調べたところ、三重県がビズリーチに外部業務委託をしてCDOを公募しました。広島県福山市もビズリーチに外部業務委託してCDOを採用する予定だということでした。これらの業務委託費用に特別交付税が措置をされることになります。

 現在、先ほど答弁があったとおり、CIO補佐官で、四十七都道府県中五団体、千七百を数える市区町村中でも三十六団体ですが、今後、外部人材の任用、それも特別職非常勤職員や業務委託を対象に特別交付税措置も設けるわけですから、そのほとんどに外部人材が任用されていくことも想定されます。仮にそうであれば、自治体の職場の景色が大きく変貌することになると思います。

 地方行政の公正性を確保して地方自治の拡充、発展に結び付けていくことが重要であり、ベンダー企業の意思が自治体行政の上に立つなどということはあってはならないと思います。

 そこで聞きます。総務省、特別職非常勤職員は、信用失墜行為の禁止、守秘義務、職務専念義務、政治的行為の制限などの地方公務員法の適用は受けません。専門性を有する参与、顧問としての特別職非常勤職員としての任用ということではありますが、政府が推進する、中心政策として自治体の司令塔を補佐する役割であり、自治体の中枢ポストに座る役割になります。

 公務とは、そもそも守秘義務を必要とする事柄に携わります。その守秘義務が掛からない民間企業の幹部、職員が自治体の情報システムに深く関与する部署に配置されることに問題はないでしょうか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。外部人材のCIO補佐官などを特別職非常勤職員として任用する場合、地方公務員法第三条第三項各号に規定する特別職のうち、第三号の臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職に該当することから、地方公務員法上の服務に関する規定は適用されません。

 一方で、秘密に該当する情報を知り得ることなども想定されますことから、各地方公共団体において、要綱などに守秘義務等について規定することが必要となると考えております。

 そこで、現在、外部有識者等から構成される検討会において、CIO補佐官等として外部人材を任用する場合特に留意すべき事項等について、既に任用している国や自治体の事例を参考にしながら検討しているところでございまして、今年の夏をめどに自治体に提示してまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 もう既に任用が始まっているのに、これからです、対策は。先ほども指摘しましたが、法的な規律もない。せいぜいガイドラインとか技術的助言です。そして、何か問題が生じたら、その責任は地方自治体。これでは、国と政府としての地方行政への公正性や地方自治の拡充に力を尽くしているとは言えないんではないでしょうか。

 総務省、当該自治体と業務請負契約がある企業や、当該自治体が実施する入札や契約についての競争に参加が予想される民間企業からの特別職非常勤職員の任用は除外されるのか、されないのか。どうですか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。自治体が外部人材を任用する場合に、当該自治体と業務請負契約がある企業や、当該自治体が実施する入札や契約についての競争に参加が予想される民間企業からの任用は、法令により制限するものではございません。実行上、適切に対応するべきものと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 除外されるとは言えないんですね、もう一度。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。法令により制限するものではございません。

 

【伊藤岳参議院議員】

 何か複雑な言い方ですが、要するに除外されないということですね。

 要するに、当該自治体と利害関係にある民間企業からの任用が除外される明確な規定はありません。一方で、それは、これだけ多くのベンダー企業の幹部、職員が自治体のデジタル行政に携わることになると、今つながりのあるベンダー企業と全く無関係にとはいかないということも現実にはあると思います。

 政府CIO補佐官の募集要項には、国における契約権限と同様の、CIO補佐官の募集要項も私見ましたけれども、しかし、この国における契約制限と同様のことが地方自治体で可能なのか。どちらにしろ、いずれにしても、国でこうやっていますと言いますが、地方自治体の中ではどう対応していくのかという案がいまだ国会に示されないまま、デジタル関連法案や標準化法案の審議をしていくということでいいのかが私問われると思うんです。

 総務省、特別職非常勤職員は営利企業の従事、兼業について法的制限受けません。特別職非常勤職員は、当該企業との雇用関係を継続したまま兼業を行うことも可能だということですね。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。各自治体において外部人材を任期付職員や特別職非常勤職員としてCIO補佐官に任用する際などには、民間企業との雇用関係を継続し、従業員としての地位を保有したまま任用することも考えられるところでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 民間企業の雇用契約をそのまま兼業して自治体の職場に入ってくる。兼業を前提とした任用の場合、今回の法改正に基づいて自治体情報システムの標準化などを進める際、自治体の意思と民間企業との利益相反が生じることはないでしょうか。

 

【大村慎一総務省官房地域力創造審議官】

 お答えいたします。こうした兼業をした場合の雇用におきまして、自治体において民間企業等から外部人材を任用するわけですから、公務の公正性に疑念を抱かれることがないように十分留意することが重要であることは当然でございます。

 御指摘もございましたが、国においては、公平性を確保する観点から、例えばCIO補佐官の公募に際して、募集要項において応募者が民間企業等との兼業を予定している場合に、仮に採用されれば、兼業で所属している事業者等の入札制限が行われることをあらかじめ周知をしております。自治体におきましても同様の懸念は考えられることですので、各自治体において要項などにこうした入札制限等について規定することが必要であると考えております。

 こうしたことを含めて、総務省としては留意事項について検討をしており、また事例の周知も含めて、今年の夏をめどに自治体DX推進手順書として提示したいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 だから、利益相反、考えられるんでしょう。兼業としての任用という場合、雇用先の企業の自分のデスクで、テレワークという形で、そこで自治体業務に当たることだって可能ですよね。そこでお隣の雇用先の企業の上司に指示を受けるということもあり得るかもしれないじゃないですか。

 私、地方自治体のDX推進計画に係る検討会の資料を読まさせていただきました。この中に、デジタル人材確保支援についてという項目があって、ベンダー、事業者から聞き取りをしたものが書かれています。一例、紹介します。特定のITベンダーの社員がCIO、CIO補佐官として任命されることにより、特定ベンダーのシステムが優位に調達されるリスクが懸念される、これ、ITベンダーの社員がこう言っているんです。さらに、入札において、所属している事業者等の参加を制限することが考えられる、対策としてね、また、現役のベンダー社員の採用は困難じゃないかという意見も出ているんですよ。ベンダーからさえも利益相反の危険性がこうやって指摘をされているんです。総務大臣並びにデジタル担当大臣にお聞きします。

 自治体の外部専門人材の任用に当たっては、厳格な規制なしに自治体DXを進めるべきではないのではないかと思いますが、まず武田大臣からお聞きします。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ちゃんと聞いていただきたい。もう一度言います。自治体の外部専門人材の任用に当たって、厳格な規制なしに自治体DXを進めるべきではないと思いますが、大臣の見解どうですかと。同じ質問を平井大臣にもします。

 

【平井卓也デジタル改革担当大臣】

 公務の公正性に疑念を抱かれることがないように十分留意するという意味で、今までもIT総合戦略室、CIO補佐官、政府の方でずっと雇っていましたので、常にその問題はずうっと議論をしてまいりました。ここは運用でそういうことをしているんですが、恐らく地方自治体にとってみても、多分そういう疑念持たれたら、やっぱりそこの住民に対する説明責任が発生するんだと思います。

 そういう意味で、我々も今、さらにいろいろと勉強しながら、どうやったら公正で疑念を持たれないような調達ができるかということを考えておりまして、さらに総務省とも連携しながら、そういう形を今後ともつくっていきたいと、そのように思っております。

 

【武田良太総務大臣】

 こうした場合、各自治体においてしっかりとこうした公務の公正性に疑念を抱かれることがないよう十分留意されることが重要であると考えております。

 先ほど申しましたように、総務省では現在、外部人材登用に当たっての留意事項等について検討しておりまして、今年の夏をめどに自治体DX推進手順書として提示したいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 留意、留意って言いますけど、これから検討するんですよね。東北新社の問題もあった、NTTの問題もあった。本当に利益相反の懸念を払拭しないままこの計画、DX計画突き進むというのは、私、絶対あってはならないと思います。民間外部人材の任用が、もちろん民間の力は借りなきゃいけませんが、民間人材の活用が利益相反など行政にゆがみを生じさせる温床になるということは絶対にあってはならないということを強く指摘しておきたいと思います。

 最後に、個人情報漏えい問題について幾つか聞きます。顧客情報管理ソフトウエア大手のセールスフォース・ドットコムが手掛けるクラウドサービスを利用する地方自治体での不正アクセス被害が次々に明らかになりました。このセールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを利用する自治体は九自治体、約十一万人に及ぶそうです。つまり十一万人の住民が個人情報漏えいの危険にさらされていたということになります。同社のアクセス権限を再設定するツールは何と英語版のみの提供だったそうです。また、更新のたびに数百枚の設定マニュアルを読み込む必要があったそうです。専門家はこう指摘しています。正しく実装できる技術者は少ない。また、アマゾン、マイクロソフトのクラウドサービスの場合も二百以上の機能を利用者、つまり自治体が組み合わせて使うなど、現状の仕組みは分かりにくいと専門家が指摘をしていました。

 そうした下で、個人情報漏えいの不正アクセス被害が明らかになったわけです。内閣官房と総務省に聞きますが、このセールスフォース・ドットコムのクラウドサービスを利用する地方自治体での不正アクセス被害について、どのような対応をしてきましたか。まず、内閣官房。

 

【山内智生内閣官房内閣審議官】

 お答え申し上げます。委員御指摘のとおりの状態が起きておりましたこのセールスフォース社が提供いたしますセールスフォースというこのソリューションでございます。設定の不備によって、利用者が意図しない形で情報が外部から参照をされる状態が起きておりました。今年の一月に私ども内閣サイバーセキュリティーセンターの方では同社とも直接お話をいたしました。

 状況を聞き取った上で、サービスの利用状況、各種設定の確認の見直しを行うなど適切なセキュリティー対策を講ずるよう、総務省を通じて地方公共団体、それから一般の方々に対しても注意喚起をしてまいりました。総務省を始めとした関係機関と連携をいたしまして、今後ともサイバーセキュリティーの確保を推進してまいりたいと考えております。

 

【髙原剛総務省自治行政局長】

 御答弁申し上げます。セールスフォース・ドットコムのクラウドサービス事案につきましては、本年一月二十九日にNISCから重要インフラ事業者等に対して注意喚起が発出されたことを受け、総務省としても、同日付けで地方公共団体情報システム機構を通じて地方公共団体に対して周知を行いました。

 さらに、その後、複数の地方公共団体において該当製品の設定不備による情報漏えい等のインシデントが確認されたため、総務省から地方公共団体に対して三月四日付けで、同サービスの利用状況や各種設定の確認、見直しを行うなど、適切な対応を要請したところでございます。以上でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 大変重大な事案だと思います。国が策定する標準仕様に基づき地方自治体が自治体情報システムを動かす中でセキュリティー問題が発生して情報が漏えいしてしまうなどの問題が生じた場合、国が責任を負うのか、またこの漏えいに対応するシステム改修などは国が責任を負うのかどうか、これも大事な、問われている課題だと思います。そのことを指摘して、質問を終わりたいと思います。