【伊藤岳参議院議員】
日本共産党の伊藤岳です。放送法は第三条で、放送番組は何人からも干渉されないと定めています。この放送の自主自律をめぐり、NHKに対する国民の信頼が大きく揺らいでいることは重大です。
NHKが、高齢者を始め多く国民の被害を及ぼしたかんぽ不正販売問題を、「クローズアップ現代+」、二〇一八年四月二十四日放送で放送したことは、公共放送の役割として当然のことでした。しかし、番組に対する日本郵政グループからの抗議に対して、予定していた第二弾の放送番組を取りやめ、しかも経営委員会は放送法第三条に違反してNHK会長を厳重注意し、さらにはその際の経営委員会議事録を隠蔽し続けています。
私たち日本共産党はこうした一連の事実を重大であると捉え、こうした下で同執行部が策定し、経営委員会が了承した昨年度、二〇二〇年度のNHK予算の承認には反対をさせていただきました。残念ながら、この一年で事態は深刻さを増していると思います。NHKの第三者機関であるNHK情報公開・個人情報保護審議委員会は、二〇二〇年五月二十二日、議事録の全面開示を答申をしましたが、経営委員会は、議事録の要約を切り張りしたものをホームページ上に掲載し、実質不開示としました。これに対して、審議委員会は再度、二〇二一年二月四日に議事録を速やかに開示と答申しましたが、経営委員会は今もなお議事録の開示を拒み続けています。
資料をお配りしました。資料一を御覧をいただきたいと思います。これ、昨年の当委員会でも配付をさせていただいた報道記事、朝日、二〇年三月二十六日付けの記事です。この上から五段目の冒頭に、NHKとしては本当に存亡の危機に立たされることになりかねないという上田前会長の発言。これについて、森下経営委員長は、昨年のこの当委員会でこの発言があったことはお認めになったと思います。
資料二、一枚めくっていただきたいと思いますが、資料二の上から二段目の最後から四行目から読みますが、複数の関係者への取材で判明した一八年十月二十三日の経営委員会会合の全容。厳重注意後、約二十五分間、上田氏と石原、森下両氏との間で話合いが続いた。見出しで、NHK前会長と攻防二十五分と書いてあります。
更に一枚めくっていただきますと、この二十五分の攻防が更に詳細に書かれています。この一番下の段落の真ん中からちょっと左ぐらいですか、森下氏というのが出てきますが、こう書いています。森下氏、視聴者目線に立った対応というのは、ちゃんとやっていると相手に伝えることが大事だ、納得していないから経営委員会に来た。まあ、これは郵政がですね、郵政側が納得していないから経営委員会に来た。ちょっと飛ばしますが、その次、上田氏、相手の社会的立場によって対応を取るのかと聞いたのに対して、三人飛ばしますが、ある委員、Fという委員が、返答を会長名で出す、経営委員会が出すとなれば、今後も何かあれば応対、対応しなければならないというきっかけになると。それに対して、石原氏、森下氏は、きっかけになってもいいと。こういうやり取りをしていることが報じられております。森下氏にお伺いをいたします。このこうした発言、報道記事はお認めになりますか。
【森下俊三NHK経営委員長】
お答えいたします。新聞報道の一つ一つについてコメントすることは控えさせていただきたいと思っておりますが、そういった趣旨の発言があったことは記憶しております。
【伊藤岳参議院議員】
資料の最後をめくっていただきたいんですが、一番上の段落の真ん中からちょっと左ぐらいですか、森下氏というのが出てきます。本当は、郵政側が納得していないのは取材内容だ。納得していないから、経営委に言ってくる。本質的なところはそこで、向こうは今も納得していない。それに対して上田氏は、森下氏が話したところに入っていくと、これは私の問題というより、経営委も含めてNHK全体の非常に大きな問題になる。森下経営委員長、これはお認めいただけますか。
【森下俊三NHK経営委員長】
先ほどお話しいたしましたが、新聞報道の一つ一つにコメントすることは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、そういった趣旨の発言はあったと記憶しております。
【伊藤岳参議院議員】
こういうやり取りがあったということはお認めになったということで確認をしたいと思います。
この記事の中の会話の最後に、去年、私が当委員会で紹介した記事にある、上田会長、前会長の、NHKとして存亡の危機に立たされることになりかねないという言葉が書かれて、出てくるんですね。森下氏はこれまで、番組に関する発言もありましたけれど放送番組に介入したことはありませんと答弁をされてきましたけれども、今紹介した記事、お認めになったこの記事の流れを見ますと、取材内容、番組作りを問題にしています。
こうした発言は、放送法第三十二条第二項が規定する委員、この経営委員ですね、個別の放送番組の編集について、第三条の規定に抵触する行為をしてはならないに違反する行為ではないですか。報道記事の中においても、ほかの経営委員が個別の放送番組への解消、干渉、介入になる旨の発言をしている、しております。
今確認してきたような報道の内容は議事要旨には全く出てきませんし、NHKのホームページ上にも全く出てきません。つまり、全く別物の会議の要旨になってしまっています。森下委員長、これでは議事要旨にならない、これでは放送法違反の事実を隠すために議事録を公表しないのではないかと言われても仕方ないんではないですか。どうですか。
【森下俊三NHK経営委員長】
お答えいたします。経営委員会としてはあくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものでありまして、郵政三社から言われたことの事実関係を確認するためにいろいろ質問はしております。
しかしながら、あくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものでありまして、放送法第三条あるいは三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しております。そういった意味で、番組の編集の自由を損なうような事実はありませんし、執行部もそうした事実はなかったとしております。さらに、これは時系列で見ましても、放送そのものが、その年の七月に全部終わっております。経営委員会に来たのが十月でございますので、全く時系列的に見ましても、そういう、その介入したという事実はございません。
【伊藤岳参議院議員】
先ほどあなたがお認めになったこの報道記事の流れから見ると、ガバナンスの問題じゃないじゃないですか。報道そのもの、番組そのものに入り込む話ですよ。もう一度聞きますけれども、今言われたこの新聞による二十五分間のバトルは議事要旨には書かれていませんよね。これでは議事要旨にはならないと思いますが、どうですか。
【森下俊三NHK経営委員長】
お答えいたします。議事要旨には、前会長からあった発言のうちポイントとなる大事な発言は一連の対応の経緯に記載しているという認識でございます。あくまでもガバナンスに関する議論でありまして、御指摘のあった発言、これについては本人の受け止め方の問題でありまして、経営委員会として特に大事だとは認識しておらず、当時、経営委員会からも特段の意見は出なかったと認識しております。
【伊藤岳参議院議員】
今紹介したような報道の内容がまさにど真ん中の話だと思いますよ。ちょっと認識がおかしいと私は思います。
審議委員会の第一回目の答申でも、当時の経営委員会の議事録について、会長を厳重注意という重大な決定を行った意思決定過程は、より強く透明性が求められる、検証されるべきものであるとして開示を求めています。審議委員会の二回目の答申では、要約された文書は開示の求めの対象文書との同一性を失ったもの、公開制度の対象となる機関自らが対象文書に手を加えることは対象文書の改ざんというそしりを受けないと厳しく批判し、開示を求めています。私、まさにそのとおりだと思うんです。
森下経営委員長、この審議委員会の二回目の答申を受けて、衆議院の審議の中で森下氏は、NHK情報公開規程第二十一条に基づきまして、NHKは審議委員会の意見を尊重し、再検討の求めに対する開示、不開示等の判断を行う、二度目の答申というものを尊重しまして現在検討している最中であると答弁されましたし、先ほど別の委員の質問にもそうお答えになりました。先ほど、岸議員や那谷屋議員の質問に対して、検討を進めているのかということに対して日付などの話がありましたが、検討の中身については言及ありませんでした。検討している中身は何なのか。そして、経営委員会で検討しているのであれば議事録ありますよね、議事録を公表してほしいと思いますが、どうですか。
【森下俊三NHK経営委員長】
まず、先ほどお話ありましたが、一回目の審議委員会から答申出ましたときには、私どもははっきりと、当時の議論は非公表を前提としておりますので対象文書そのものは公表できませんが、NHK情報公開規程に従いまして、答申の趣旨、これは先ほど御説明いたしましたが、視聴者に対する十分な説明責任を果たすというためにということがございましたので、その趣旨を尊重し、説明責任を果たすために改めて整理、精査した上で公表したものでございます。
そういった意味で整理、精査したものであることは請求者にその旨を付して回答しておりまして、改ざんという認識はございません。それについては審議委員会にもお話をしているところでございます。
それから、今回の、現在、二回目の答申でございましたので、私どもは今慎重に議論をしているところでございます。経営委員会は十二名の合議制でありまして、そういった意味では、二月九日から検討を始めておりますが、しっかりと十分な議論を行うことが必要であります。そのほか、途中の段階で公表すると視聴者・国民の皆様に無用な混乱を来すおそれが考えられるということもございますので、現時点で議論の内容を明らかにすることは差し控えさせていただきます。経営委員会の透明性の確保という観点から、方針決定後に議論の内容は公表したいと考えております。以上です。
【伊藤岳参議院議員】
森下さん、あなたの発言は放送法に抵触しますよ、これ。議事の経過は公表するということになっているじゃないですか。経営委員会で検討したんですよね。経営委員会で検討した結果を何で議事録公表しないんですか。そうなっているじゃありませんか。
【森下俊三NHK経営委員長】
先ほどお話ししましたように、現在検討中でございまして、経営委員会、十二名の合議制でございますので、十分な議論をしてしっかり議論することが必要でございます。そのために、途中の段階で公表すると視聴者・国民の皆様に無用な混乱を来すおそれがあるということで、最終的に検討が済んで、方向、方針が決定した段階でそれまでの議事の内容も公表するという考えでございます。
【伊藤岳参議院議員】
大変重大な発言をしていると思いますよ。経営委員会議事運営規則には、遅延なく議事録を公表するとなっているじゃありませんか。これ、あなた自身が規定される経営委員会議事運営規則違反だと私は思います。大体、経営委員会の委員は国会の同意人事ですよ。NHKの最高意思決定機関である経営委員会の透明性を確保するために、放送法第四十一条は議事録の作成と公表を義務付けているんです。その委員の議論が国会や委員会に隠されることは絶対あってはならないと思います。
前田会長にお聞きします。審議委員会の二回目の答申を受けて、NHK情報公開規程第二十一条に基づいて一八年十月二十三日のこの経営委員会の議事録を公表を行うべきではないですか。会長としての認識をお聞かせください。
【前田晃伸NHK会長】
お答え申し上げます。NHK情報公開・個人情報保護審議委員会がかんぽ問題に関する情報公開請求の再検討の求めに対し、再度開示が妥当と答申したことは重く受け止めております。NHK情報公開規程第二十一条では、NHKは、審議委員会の意見を尊重して、再検討の求めに対する開示、不開示等の判断を行うと定められております。まずは、経営委員会が開示するかどうかの最終判断の検討を行い、その結果を請求者に通知するものと承知しておりますが、経営委員長は審議委員会の答申を尊重すると言っておりまして、その判断を注視したいと思います。
【伊藤岳参議院議員】
大臣にも伺います。放送法第四十一条に基づいて、NHKは国民・視聴者への説明責任を果たしていくことが求められているのではないでしょうか。議事録の公表が求められているのではないでしょうか。大臣の見解を伺います。
【武田良太総務大臣】
NHK経営委員会の議事録に関しては、情報開示請求に関する本年二月の答申について、まずはNHK経営委員会において、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申を尊重した上で検討がなされるものと承知しており、私の方からのコメントすることは差し控えたいと、このように思います。
【伊藤岳参議院議員】
先ほどもちょっと紹介しましたが、放送法第四十一条の改正を受けて、NHK経営委員会議事運営規則というのが策定をされています。ところが、この議事運営規則は最近まで全く公表されてこなかったんです。策定から五次にわたって改正が行われていますが、全く公表されてきませんでした。この運営規則の策定時から五次にわたる改正全てを当委員会に公表していただきたいと思います。委員長、お取り計りをいただきたいと思います。
【浜田昌良総務委員長】
後刻理事会で協議します。
【伊藤岳参議院議員】
次期経営計画に関わってお聞きします。前田会長、次期経営計画に受信料値下げが盛り込まれました。菅総理は一月十八日の所信表明演説で受信料一割値下げに言及しましたが、NHKが受信料一割値下げを公表したのはいつですか。
【前田晃伸NHK会長】
お答え申し上げます。一月十三日に次期経営計画を公表した際に、二〇二三年度に事業規模の一割に当たる七百億円程度を確保して値下げを実施したいということを表明いたしました。また、衛星波を削減する年なので衛星付加受信料の値下げをしたいと考えておりましたため、一月二十日の会見で、放送総局長が記者の質問に答え、衛星付加受信料の一割値下げを目指したいという一つの目標を申し上げました。以上です。
【伊藤岳参議院議員】
一月十三日に経営委員会が開催されていると思います。この経営委員会では一割値下げと決めたんですか、森下委員長。
【森下俊三NHK経営委員長】
八月のパブリックコメント以降、多くの方から値下げの意見いただいておりましたので、経営委員会と執行部で値下げの検討等議論をいたしておりましたが、最終的に値下げのめどが付いたということで、その時期に整理を、委員会としての整理をしたということでございます。
【伊藤岳参議院議員】
明確にお答えされませんでしたが、一月十三日の経営委員会で決定されていないと思います。それが、突然、総理の所信表明演説を受けて一割値下げということが公表される。これ、菅政権の看板政策付けのために政権が介入した、政権の意向に沿った政策判断が働いたのであれば、問題ではないかと思います。検証が必要だということを申し添えて、質問を終わります。
【以下反対討論】
【伊藤岳参議院議員】
私は、日本共産党を代表して、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK二〇二一年度予算の承認に対して反対の討論を行います。
放送の自主自律の遵守が求められるNHKに対する国民の信頼が大きく揺らいでいることは重大です。NHKがかんぽ不正販売問題を報じた番組に対する日本郵政グループからの抗議に屈し、しかも、経営委員会が放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条及び三十二条に違反してNHK会長を厳重注意をし、さらには、その際の経営委員会議事録を隠蔽するという一連の事実は重大です。
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が議事録の全面開示を求める答申を二度にわたり出したことは異例です。これはNHKの自主自律に対する強い危機感を示すものです。経営委員会とNHKは、同審議委員会が対象となる機関自らが手を加えることは対象文書の改ざんというそしりを受けかねないと指摘し、さらに、経営委員会、執行部が挙げた公開できない理由を全て否定している事実を重く受け止めるべきです。協会全体のガバナンスに関わる会長厳重注意という重大な決定を行った議事録の開示を拒み続け、視聴者・国民への説明責任を放棄する経営委員会、執行部の姿勢は断じて許されません。
こうした下でNHK執行部が編成し、経営委員会が議決した二一年度予算に対して承認することはできません。
最後に、国民の代表としての自覚を持ち、放送法を遵守する経営委員会に改革することを強く求め、反対の討論とします。