議事録

2021年3月26日 本会議(地方税法、地方交付税法等の改正案に対する反対討論)

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。私は、日本共産党を代表して、地方税法、地方交付税法等の改正案に対する反対討論を行います。

 まず、総務行政の根幹に関わる総務省接待問題に触れないわけにはいきません。認可権限などに係る幹部官僚や大臣、副大臣、政務官に対する高額な接待が繰り返され、行政がゆがめられたのではないかという疑念は、国会審議を通じてますます深まり、総務行政そのものに対する国民の信頼が大きく揺らいでいます。ところが、その渦中にある菅総理や武田大臣が、この深刻な疑惑に対して正面から向き合わず、事実の徹底解明と真相究明に背を向け続けていることは、全く無責任な態度であり、絶対に許されません。

 東北新社による総務省幹部官僚の接待問題です。菅総理が総務大臣当時、自ら大臣秘書官に任命した長男の菅正剛氏が勤める東北新社が、当時の谷脇康彦総合通信基盤局長や山田真貴子総務審議官など、衛星放送の認可権限に連なる数多くの幹部官僚を繰り返し接待してきた疑惑です。

 二〇一八年に一旦まとめられていた衛星放送の未来に関するワーキンググループの報告書案が二〇二〇年には改めて出し直され、例えば、一八年報告書案では、BSの右旋帯域については、新たな利用可能帯域は容易に見込めないとされていた点が、二〇年報告書案では、一転して、一定帯域が確保できた場合には、当該帯域は4K放送に割り当てるべきであるなどの変更が加えられています。そして、まさにこの時期に集中して、事業に係る幹部官僚が繰り返し接待を受けていたのであります。

 総務省は、調査過程で得た全ての資料を開示すべきです。東北新社の関係者を国会に招致し、真相の徹底究明をしなければなりません。

 東北新社の外資規制違反の事実も明らかになりました。外資規制違反を見逃してきた総務省の責任は重大です。問題は、規制違反を認識した東北新社が総務省に面談をして報告をし、あわせて、子会社への事業承継によって違反を解消する案を示したという東北新社の主張についての検証が求められているということです。

 総務省は、総務委員会での私の質問に対し、東北新社からは、木田由紀夫執行役員、当時は、二〇一七年八月七日に当時の衛星・地域放送課長の井幡晃三氏の携帯電話に電話をして、その際、同課長から、自分は休暇中であるため当時の総務課長の鈴木さんのところへ行ってくださいと伝えられていたという回答を得ているということを明らかにしました。

 井幡課長の携帯電話へのこうしたやり取りがあったから、八月九日頃に当時の鈴木信也課長と面談したという東北新社側の話の筋が明らかにされたのです。記憶にないという鈴木氏、井幡氏の言い分は到底通りません。東北新社の話が事実だったのかどうか、総務省は詳細に検証すべきではありませんか。まして、国会で答弁しようとする官僚の前で、武田大臣が閣僚席から記憶にないと言葉を飛ばすなどは論外です。真相究明に背を向ける武田大臣の姿勢をはっきり示すものと言われても仕方ないではありませんか。

 さらに、NTTによる総務省幹部官僚、政治家への接待問題です。情報通信事業に対する認可権限などに関わる総務省の幹部官僚に対して高額な接待が繰り返され、さらには、総務大臣を始め副大臣、政務官など多数の政治家がその在任中にもNTTから高額接待を受けていた事実も明らかになりました。国民の疑念を招くような会合、会食に応じることはないと繰り返し答弁し続けた武田大臣も、週刊誌に報じられて、NTT田社長との会食を共にしたことを認めました。

 これらの接待は、二〇一八年から三年間にとりわけ集中をしています。二〇一八年には、当時官房長官だった菅総理が携帯電話料金の値下げについて発言しています。二〇二〇年九月には、NTTがドコモ完全子会社化を発表し、十一月には、約四・三兆円を投じた株式公開買い付けが行われました。そして、十二月には、格安料金プランahamoが発表されたのです。高額接待を繰り返し受けていた総務省とNTTとの不透明な関わりの中で、情報通信市場に大きな影響を及ぼすそれらの決定が政策的な検証や検討もなく進められていることに疑念が深まっています。

 これらの疑惑は放置できません。幹部官僚の辞職で蓋をすることは許されません。事実の徹底解明、真相の究明に向けて、国会がその役割を果たしていこうではありませんか。

 地方税法改正案、地方交付税法等の改正案に対する反対理由です。法案は、地方の財源不足の穴埋めに、一・七兆円もの臨時財政対策債の発行を地方に迫るものとなっています。昨年十一月に出された財務省の財政制度等審議会の建議は、地方財政について、新型コロナ対応を名目とする安易な歳出拡大は許容しないとし、新経済・財政再生計画に沿って、社会保障関係費の自然増を抑え込み、地方の歳出水準を前年度と実質同額とするやり方を踏襲して、地方の歳出改革を貫くとしました。来年度の地方財政計画は、この財務省方針の大枠を踏まえたものとなっています。

 しかし、毎年増加する社会保障関係の財源を、地方が給与関係費や投資的経費を削減し、捻出してきているのが実態です。新型コロナは、これまでの地方行財政の在り方を根本から見直すことを求めています。一般財源総額の実質同水準ルールはやめて、地域の公衆衛生体制、医療体制を確立するための財政需要や社会保障関係費の自然増分を地方財政計画に反映し、地方交付税の法定率を抜本的に引き上げて、地方が必要とする一般財源総額を確保することが必要です。

 そのために、国は責任を果たすべきです。地方債の特例発行に頼るやり方には反対です。新型コロナの下、貧困と格差が広がっています。地方税でも、生計費非課税、所得の再分配機能を高めることが求められています。

しかしながら、地方税法の改正内容は、これに応えるものとはなっていません。地方税の見直しとともに、消費税五%への減税こそ直ちに行うべきではありませんか。

最後に、菅政権がコロナ禍を口実に進めようとしているデジタル庁の設置、行政のデジタル化についてです。地方公共団体情報システム機構に新たな基金を設けて、国費を投入し、自治体業務システムの標準化、全国規模のクラウドへの移行、マイナンバーを用いたオンライン手続などを推進するとしています。

 業務システムの標準化やクラウド移行によって、システムに自治体の仕事内容を合わせることが目的となり、自治体独自のサービスが抑制、後退されることになりかねません。住民自治、団体自治への侵害という点からも大きな問題があります。また、デジタル化、オンライン化ありきでは、行政サービスへの入口が遠くなり、個人情報保護が置き去りにされるおそれは拭えません。こうした問題を持つ自治体行政のデジタル化を支える財政措置には賛成できません。

 以上を述べて、反対討論とします。