国政報告

2021年2月17日 国際経済・外交に関する調査会 海洋における生物の多様性の保全と生物資源の持続可能な利用に向けた課題と取組

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。参考人の皆さん、今日は貴重なお話をありがとうございました。生物多様性の劣化が何を引き起こすのか、レッドリストに追加される絶滅危惧種が増えるなど、人間が健康に生きていくための環境を激変させているというお話が今日聞かれたと思います。日本の水産資源も乱獲やプラごみの影響などで直線的に減少し、このまま推移すれば二〇五〇年にはほぼゼロになるペースだという研究者の話も見たことがあります。

 先日、十二日、WWFジャパン、自然保護協会も一緒だったんですかね、幾つかの市民団体が共同でプラごみ削減、水産資源の保全のためのプラごみ削減の提案を出されたという新聞記事を見させていただきました。今日は東梅参考人のお話の中にもプラごみの話が幾つか出てまいりました。

 プラスチックリサイクル率、日本は一六%。実は、ここは熱回収がそのうち六八%も含まれているんだという話がありましたけれども、熱回収でプラごみを処理するというのは結局CO2を出すわけで、温暖化に逆行するということになります。ですから、私、日本のプラスチックリサイクル率一六%というのはちょっとまやかしで、熱回収を除くと何%なのかと、もし御存じでしたらお聞かせいただきたいし、そういう角度から警告をした方がいいんじゃないかと思いますし、また、結論として、プラスチックの大量生産、大量消費を転換していくということがもっと国民に周知されなければいけないというふうに思います。

 また、お話の中で、プラスチック政策の国際的協定というお話がありました、七十か国が支持をしていると。この国際的な協定の内容なんですが、例えば熱回収じゃ駄目なんだとか、プラスチックの大量生産、大量消費を改めるんだとか、そういうやっぱり中身も盛り込まれるべきとお考えか。また、七十か国といっても、OECD諸国のうちどれぐらいが参加しているのか、もし御存じでしたらお聞かせいただきたいと、東梅参考人にお願いいたします。

 

【東梅貞義公益財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長】

 伊藤議員、ありがとうございました、御質問。まず、プラスチックのリサイクル率のお話、十四ページ、資料を見ていただきたいと思います。十四ページで、一六%というのは国内リサイクルです。それとは別に六〇%熱回収をしているということなので、一六%のうちの六〇%の熱回収ではなくて、国の言い方としては、リサイクルというかサーマルリサイクルと言っていますが、環境団体から見れば、残念ながら、それは望ましいリサイクルとは全く国際的に言えないというふうに考えております。というのがまず御質問いただいた一点目です。

 二点目、今度は資料の三十ページを見ていただきたいと思います。拘束力のある新たな包括的国際協定、それがどういうもので構成されるべきなのか、そこに日本はどう参加するべきなのかというお話です。

 国際条約というのはやはり共通性があります。実効性を求めるためには、それぞれが責任のある、分担のある負担をしながら国際協調で解決していく、つまりは、各国ができることを皆さんで言うのではなくて、国際目標を最初に定めるということだと思っています。そうすると、二〇三〇年には、プラスチックを使っていながら海の中に流出させることをゼロにしようという大きな目標を掲げる必要があると思っています。それがこの一番目、国際的ゴールと国の行動計画という、まず一番大きな国際目標をしっかり国際交渉、外交の中で定めていくということだと思っています。

 ただ一方、これがその目標だけで全て変わるかというとなかなか難しいので、今度は四番目の点になりますけれども、じゃ、どういう素材というのが自然環境に流出したときにより長期にわたって環境、生き物に影響を与えるのかという、リスクの高い素材がどういうものなのか。それを生産し続けるのではなくて、例えばフロンの規制等々、皆さんにも御記憶にあると思いますけれども、リスクの高いものから順番に科学によって確定し、それをなるべく早くやっていく、第二段階に更に縮小するものを定めるという、今度は産業がうまく移行できる措置というのを科学に基づき、国際合意に基づき、一方的にするのではない又は二か国間だけでやるのではなくて、多国間で解決するということをルール作りすることによって、先に頑張った国が損をする又は後から来た企業が得をする、なるべく使った企業が得するということではなくて、フェアな競争環境とそれに向かった国際目標の合意というのがセットになることが望ましいと考えております。以上です。

 

【伊藤岳参議院議員】

 OECD諸国で何か国ぐらいというのを先ほどお聞きしたんですけど、分かりますか。

 

【東梅貞義公益財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長】

 もう一度確認してからお返事させていただきたいと思います。ありがとうございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 生物多様性の劣化が引き起こす一つとして、道家参考人の論文も事務局から配られて読まさせていただきました。森林破壊によって、人が自然の領域に過度に接近したことによって、先ほどもお話がありましたが、コウモリから人への新型コロナウイルスの感染ルートが生まれた可能性が高いという指摘、これ重要だと思いました。これまでの社会経済活動の在り方について考えさせられる指摘だと思います。

 また、道家参考人の論文の中には、SDGsの達成と人と自然の共生する社会を目指すには、ワンヘルスアプローチのテーマでの改革が必要だということも紹介をされています。このワンヘルスアプローチは、健全な環境、人間の健康、動物の健康を一つの健康として考えることだと私は理解をしておりますけれども、今後の社会経済活動の在り方、日本のですね、社会経済活動の在り方についての大事な視点だと思いますし、我が党も注目をしているところであります。

 また、東梅参考人が事務局長を務められているWWFジャパンの取組としても、コウモリが生息する東南アジアの森林を伐採して生産されるパーム油ですね、パームオイルの問題に取り組んでおられると聞いております。

 道家参考人、東梅参考人のお二人にお聞きしたいと思うんですが、このワンヘルスアプローチの具体的な改革、取組として、例えば感染症を拡散するおそれのある野生動物との取引と消費の抑制とか、森林破壊の防止と土地利用の転換の抑制だとか、自然との調和の取れた農業、畜産、水産の推進などが挙げられると思うんですが、日本がどのような政策を今後具体化して実行すべきか、国際的なリーダーシップを発揮すべきか、是非お二人の参考人に御意見をお聞かせいただきたいと思います。

 

【道家哲平公益財団法人日本自然保護協会広報会員連携部長】

 御質問ありがとうございます。端的にお答えできればと思います。まず、ベーシック、基本のところでは、やはり情報とか、情報の共有とか対策の共有というのがあると思います。自然界にあるそのウイルスが何らかの形で病原性を持つ、病原性を持ったら、病原性を持つ、あるいはそのウイルスが家畜等に感染する、いろんな段階がきっとあるはずで、それに極力早期に発見し、早期に対応できるということが大事だというふうに思っています。そこについて、鳥インフルエンザ対策などではかなり行政機関内の連携も深まってはきていると思うんですが、それをより広範な対象に広げていくというのが重要になってくると思います。

 外交とかそういうレベルでいうと、外来種対策にもつながるんですが、日本はペットの取引、いわゆるエキゾチックアニマルみたいなものを野方図とは言わないまでもかなり相当程度輸入している国であります。本当にこのような野生動物の利用が正しいのかというのは、世界的な動きの中でもしっかりと日本としての責任を果たしていくべき領域じゃないかなというふうに思っています。

 ですので、その情報の共有もそうですし、そもそも入ってくるものが正しいのかと。そんなに入れなきゃいけない生き物なのかとか生物なのかとか貿易なのかとか、そういうのも含めてリスク管理や、リスク管理の、リスクの共有だとか、本当にやらなきゃいけないことはたくさんあるのではないかなというふうに思っています。

 

【東梅貞義公益財団法人世界自然保護基金ジャパン事務局長】

 伊藤議員、御質問ありがとうございます。ワンヘルス、次の一年で日本がどこまで考えられるか、これが勝負だと思っております。人間の健康、動物、家畜の健康、環境の健康、この三つの問題です。三つの問題ではなくて、三つがつながっている問題です。議員の皆さんも、多分、人間の健康に関しては、ワクチンを始め人間がかからないようにするために行動の心掛け、これはかなり浸透しつつある、これからも重要な分野と認識されていると思います。

 それから、動物から人にうつるというところは、鳥インフルエンザ等々、家畜の間又は動物から人にというところも相当に取組が進んでいる、又は獣医師と医師の方の連携も始まっています。

 じゃ、このワンヘルスで何が進んでいないかというと、環境から、野生生物から人にまでうつってしまうこの経路、これに対する調査体制、報告体制、防止体制、知見が全く不足しています。これ、今の所管するところはどこなのかということも現在不明瞭な状態だというふうに環境団体では考えていて、非常に危機感を持っています。

 ということは、人の医療、それから動物の健康だけではなく、環境からどれだけリスクを持って人間にうつっているのかということに対する調査研究、情報共有、その体制に投資をする、確立をしない限り、この議論は進まないと考えています。

 そこで日本が果たす役割というのは、日本がいろんな、この生活が東南アジアからのいろんな輸入物によって支えられている、議員がおっしゃったパーム油もそうです、私たちの食生活を支えてくれています。そういうところと、現地で本当に森林伐採、森林伐採から野生生物が今度は人間の周りの生き物にどの程度病気をうつしている可能性があるのかということには着目する必要があると思います。

 もう一つ大事なのは、道家参考人もおっしゃった、日本に野生の生き物を、ペットではなくて本当に野生の生き物を輸入してペットにしているという実態です。私ども調査しました。違法輸入が過去数年にわたって千件以上あります。その違法輸入の中には、猿という人間に病気をうつしやすいもの、コウモリというやはり人間に病気をうつしてしまうもとになる、そういう生き物も含まれています。今はこれは野生生物の違法輸入というふうに扱われています。ということは、扱いが低い、優先順位が低いものです。

 本当にワンヘルスを実現する、人間と自然のつながりを、距離を見直すという先ほどお話いただきました。それをするためには、きちんとそこに予算が充てられて知見を深めない限り、大事な人間の健康、大事な家畜の健康は守れますけれども、環境から来る問題、これは解決には遠いと思いますので、是非御検討いただけたらと思います。ありがとうございました。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ありがとうございました。終わります。