国政報告

2021年2月10日 国際経済・外交に関する調査会 極域をめぐる諸課題への取組

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。参考人の皆さん、本日は貴重な意見ありがとうございました。

 参考人のお話にもありましたが、北極でも環境問題は、今、上田理事からのお話もありましたが、氷河、氷床の融解など大問題となっています。私も、こんな新聞記事を目にしました。永久凍土が解け、メタンなどの温室効果ガスが大気に放出されています。メタンガスは、CO2の約二十五倍の温室効果があります。永久凍土は二一〇〇年に三三パーから五五%も減る可能性がありますというある研究者の話です。

 そして、永久凍土の融解が原因と思われる燃料タンクの崩落と油の流出事故、これ、二〇二〇年、ロシア、ノノリスク。永久凍土の融解で炭疽菌に感染したトナカイの死骸が露出をして炭疽菌が集団発生した事故、これ、二〇一六年、ロシアのシベリアなどが起きています。細菌やウイルスを発生させることにもつながる北極の環境問題は、新型コロナ感染が急拡大している現在、改めて注目すべき問題だと思います。

 榎本参考人にお聞きしますが、私たち国会では、昨年、気候非常事態宣言を採択しました。その国会への忠告も含めて、北極におけるこうした環境問題の重大さについて、特に海氷や凍土の融解などによって起きる重大な問題点などについて御所見をお聞かせいただければと思います。

 

【榎本浩之国立極地研究所副所長】

 御質問ありがとうございました。北極圏では、今御指摘いただいたような永久凍土の融解というものが進んでいます。永久凍土は、ユーラシア大陸のかなりの部分を実は永久凍土が覆っているということで、かなりの面積を実は北半球の中で占めています。ですが、例えばシベリアに入っても、見かけはただの森林なのですね。それで、穴を掘ってみると下が凍っている、数百メートルにわたって凍っていると。そういったなかなか観測できない、見えないところに氷が埋まっている状態があります。人工衛星や現場を歩くだけでは分からなくて、ここは、長年凍土に観測の穴を掘って調べてきている人たちの様子から最近の変化は分かってきました。

 永久凍土が融解すると、その中からメタンガスが発生すると、が放出されると。で、メタンガスは温室効果が高いということで、それが更に温暖化を進めて更に永久凍土を解かすという負の連鎖が止まらなくなってしまうということが指摘されてきました。今、研究者は、どこの永久凍土がどれだけ解けているかという実態を把握するところを今走り回っております。

 それで、御指摘あった油の流出の事故も、昔そういった永久凍土が解けない時代の基準で建てられた建物、道路が現代の環境に合わなくなってきて、いろいろゆがんだり崩れたりというところで、そういった見直すというところも永久凍土圏では今急がれているというところです。トナカイの死骸からの炭疽菌の発生というところも確かに報告されまして、見えない危険がいろいろと潜んでいると。特にメタンガスについては、メタン爆弾とかというニックネームが付くほど、この永久凍土の地面の中にはそういう危険、これから危険になるかもしれないガスが、今は落ち着いているけれども、温暖化が進むと危なくなってくるというところで、研究者、研究グループとしては、モニター、これ時間掛かるんですけれども、モニターする場所を増やして、情報を集めて、地域によってその差がありますから、早く警鐘を鳴らす、そういったところで情報を出そうとしているところです。

 非常事態宣言でいう話ですと、北極圏はもうそういった非常事態に近い状態になってきていると。なかなか止まらない。すぐの対策、把握して対策をするということが急がれているというところは国際的にも言われているところであります。以上です。

 

【伊藤岳参議院議員】

 こうした環境問題にどう対応していくかが問われていると思います。先ほど来紹介のあった我が国での北極政策の決定、そこには北極の環境変化がもたらす地球環境問題の解決に向けた科学的知見の積極的発信などが列挙されております。欧米では、今、グリーンリカバリーが推進され、アメリカのバイデン新大統領は、二〇五〇年までに原発を含めないクリーンエネルギー一〇〇%社会の実現などを掲げ始めました。

 池島参考人、榎本参考人にお聞きしたいんですが、極域と地球の環境保全への対応で日本が具体的にどういう役割を国際的に果たしていくのか、また日本が何ができるのか、先ほどの話では両参考人とも科学的、学術的貢献ですとか科学技術力という言葉を使われましたが、やはり、この辺がやっぱり日本独特の役割になってくるのか、また、国際的に見て日本の環境保全対応で遅れている点などお感じになる点はないのか、御所見を伺いたいと思います。

 

【池島大策早稲田大学国際教養学部学部長・教授】

 御質問ありがとうございます。日本が具体的に行い得る貢献、これは何なのかというのは、その科学技術以外に今環境分野面での何らかの貢献ということはよく言われています。実際に、その分野のワーキンググループのいろんな会合とか、そのデータその他交換とか蓄積、共同研究、そういった面で北極においてやってきたということは広く知られているところではあります。

 ただ、それ以外に、やっぱり、最終的に決める大きな枠組みの中でやっぱり外交力というところも少なくありません。それは、外交力というのは何かと言われたときに、結局は法的な枠組みとかいろんな指針、ガイドラインというものを作るときのいろんな起案力というんでしょうかね、起案するまでに交渉し、うまいこと道筋を付けるという、そういうある種のテクニックですね。結局はその何らかの文書を作ってそれに調印するなりなんなりするわけですけれども、そこまで行かなくとも、共通理解を得られるためには、ある程度まとまった人数を誘導し、リーダーシップを発揮してそういうものを作り上げる、ある種のまとめる能力というんでしょうか、そういうものができないといけない。そういう人材をやっぱり育てるということが必要なんだと思うんですね。

 のためには、どういう方向でクリーンエネルギーを使う、何というんでしょうか、又はそういう環境問題をどういう方向へ持っていけるかということを、何というんでしょうか、見定められる、その見通しをつくれる人をまず育てて、そこから、それのための実際に環境の基準を作り出す人と、それを起案するときにまとめる能力のある人と、そういうものをうまく交渉できる人たちとか、そういう役割を全部抽出して、それぞれに合った人を適材適所にこの場所に割り振って、日本が持っていけるかということだと思うんですね。

 外交力って、結局は交渉、外交交渉、協議進めていく形でまとめていくわけですから、そういうことの、何でしょうか、イニシアチブを取れる結局人材ということになるわけですよね。そこから話合いを持っていけるかということが私の観点からは大事なのかなというふうに思っております。これとこれをやった方がという、何かあると言われるのは、ちょっと難しいんですが、条約、その文書を起案できる能力、それだけの見通しができる人ということです。

 これ、ちょっと手前みそになりますが、そういう人材を私、例えば私の学部の学生には伝えてあげたいなと思って、国際教養学部なるもので私はいろんなそういう話はしているところなんですが。以上が御回答になるかどうか分かりませんが、よろしくお願いします。ありがとうございました。

 

【榎本浩之国立極地研究所副所長】

 御質問ありがとうございました。先ほど、永久凍土のところからちょっと話がつながるんですけれども、永久凍土が解けることによって、実はメタンガスだけではなくて凍土中に眠っていたいろんな汚染物質、例えば水銀とかそういったものが海に流れ出してきていると危惧されています。魚を食べている住民はそれがどういった影響があるのか実態を知りたいというところで、日本の例えば水俣会議とかにも先住民が来て話を聞いていく、あるいは情報提供するというところのやり取りなども行われています。

 北極の評議会の中にワーキンググループ、今日お話ししましたけどありまして、そういったところでは水銀汚染、ブラックカーボンの問題、あと大気汚染とかそういったものが温暖化によって、現在の北極環境によってどれだけ出てきているかというところを議論するところがありまして、残念ながら一番上の意思決定のところには日本は入っていないんですけれども、そこで判断に使う資料の精度のいいものを日本は提供するというところで、ボトムアップのところの情報の流れの中には、源流のところに入っています。そういったところの貢献があります。

 さらに、その北極評議会のワーキンググループなんですけれども、自然科学の専門家だけですと、実は自分の専門だけ非常に詳しくてそれ以外のところにはなかなか発展していかないというところがあって、大体科学の分野はそうなんですけれども、こういった評議会のワーキンググループのところに行きますと、科学の分かる行政官、あるいは、自然科学のドクターを持っているんだけれども今はそういった国際政治、行政で働いている方という方がたくさんいます。両方ともの議論に参加できる人、人材がそこに集まっているというところで、日本でもそういった専門家を養成する、これから育てていくというところはあるのかもしれないですけれども、さらに、ああいった場面に行きますと、私たち自然科学のそばに一緒にパートナーとしてしゃべってくださる環境行政の方がいるとすごくうれしいというふうな、一人で両方ともできるというのが将来の望ましいところですけど、そういったところとしては、そういった専門家の養成、両方できる方の養成というのは非常にこれから必要になってくると思います。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ありがとうございました。